アル・パチーノ 75歳

 その人に支払われるギャラは、その人が代えが効かないポジションに居るかどうかで、決まるらしい。 役者のギャラ、スポーツ選手のギャラは、そこら辺を考慮して決まるようだ。 まぁ俺ら凡人は、代えがいっくらでも効くポジションに居るっちゅーことだ。 

 しかし、俺の言う代えが効かないポジションというのは、強烈無二な個性を持っている人たちの事である。 マックイーン、優作、ブルース・リーポール・ニューマンetc 俺も間もなく、生れ落ちて半世紀になる。 ホント、50歳と書くよりも、半世紀と書くと、やっけに人生に重みを感じるもんだ。 一世紀の半分も生きちまっているんだぜ? 凄いよな、俺も驚きだ。 そこまで生きてくると、青春と言われる時期は、20年以上前の話になってしまう。 そーなるとだな、その時、大活躍の人たちは、老年期に入ってしまい、さよならの時間がやってくるのである。 

 こればっかりは、待ってくれぇぇ!! っと言っても、無理なのだ。 俺の大好きな、アル・パチーノも75歳になっちまっている。 目がギラギラしておって、人を虜にする流暢な台詞回しも相変わらず、変わらないのだが、70歳を越えちまっているのだ! 未だに毎年、舞台に立ち、毎年のように映画が封切られる。 これって、凄いよね。 風貌も、70歳を越えておるとは、思えん!!

 俺も、彼女も、アル・パチーノのファンである。 そんな訳で、Dearダニー 君へのうた

 70年代、ゴッド・ファーザーで、注目され、あれよあれよと、スターダムに乗っかる。 あの人を射るような目つきは凄い! あんな凄い目力滅多にいない。 活躍しすぎて、メディアに叩かれ、作品に恵まれない時期もあったが、今じゃ、再び、最前線で活躍しておる。 老いて尚、大活躍である。 

 そんな、パチーノの最新作は、ロックスターである。 パチーノが、ロックスター? って思うだろ、俺もそう思う。 ちょっと観てみたいと思った訳である。 

 ジョン・レノンが新人に宛てた手紙が数十年後に手元に届いたという実話をモチーフにして、作られておる。 そこそこに成功に恵まれ、過去のヒット曲をツアーで歌い、日本でも、そんな歌手が居られますな、長く曲を作らず、薬に溺れた生活をしておったところにレノンの手紙が、十数年後に届くというお話し。 憧れのレノンから、新人だった自分自身に励ましの手紙が届き、この自堕落な生活に疑問を持つというお話。 

 オープニング、アル・パチーノ演じるダニー・コリンズが満員の観客席に登場する。 このシーン、シカゴのライヴ会場を10分間借りて、撮影したらしい。 パチーノの歌声を聴いてみたいという興味もあった。 至って、普通でした。 

 脇を固めている役者さんがよろしい。 マネージャーで、親友役にクリストファ・プラマー。 サウンド・オブ・ミュージックのトラップ大佐といえば、判ってもらえるかな? 俺は、サウンド・オブ・ミュージックの頃からファンで、懐かしいとこじゃ 「ピンクパンサー2」 の怪盗ファントム役も好きだ。 最近じゃ、「ドラゴン・タトゥーの女」 の年老いた依頼主の役も良かった。 今回も、パチーノの相手役を軽妙に演じておる。 そして、ダニーが豪邸を抜け出し、長期滞在するホテルの支配人役にアネット・ベニングウォーレン・ベイティのかみさん。 20年位前は、凄っい綺麗だったのにいつの間にか、普通のおばさんになってしまった! ベイティが半ば、引退しとるから、アネットの方が活躍しておる。 

 なんといっても、いつも力み気味の演技のパチーノが、普通の演技をしておる。 肩の力が抜けた普通のおっさんになっておる。 怒鳴るシーンがまるっきりない。 薬で、ラリっちゃうシーンはあるけれど、普通にラリっている? 逆に新鮮だった。 彼女が言っておったが、「パチーノの声って、いつもしゃがれているけど、あれも演技だったのね」 確かに今回、普通の声でした。 作品として、全体的に全部、普通の印象だった。 でも、久々にパチーノをスクリーンで観れて嬉しかった。

 ちなみに映画では、ダニー・コリンズになっているが、実際は、スティーブ・ティルストンというカントリー歌手に手紙が送られておる。 

 本物のレノンの手紙には 

 「裕福になることはあなたの考え方を変えるものではない。 唯一の違いは、お金や食べるもの、住む所に悩まなくてもよくなるということだ。 でも感情や人との関係などはすべて他の人と同じ。 私もお金持ちになったり貧乏になったりしているし、ヨーコも同じ。だからそんなことを心配する必要はない。」

 レノンは、アーティストとしての部分が大きかったから、金があろうが、なかろうが関係なかったのだろう。 普通の人が、恐れていることには、無頓着だったのかなぁ。 

 追記 ちなみにBGMは、当然、レノンです!!