お前、一つ目標が達成できたじゃん

 俺は、長いこと一人で、生きてきた。 うーん、これは、ちょっとばかり、大げさな言い方であり、おふくろに言わせりゃそんなことは出来ちゃいなかったであろう。 自分だけの思考の中に生きていた言えばいいのかな。 そんなことを長いことしておって、人から影響を受けることが嫌いだった。 自分自身の中に偉大な支持者が居るわけだから、他に支持者は必要ない。

 だから、彼女が出来ても、大して変化することはないと思っていた。 だが、大きく変化していることに気がついた。 彼女が居ることによって、実際変化が起きる。 こないだも、トレッキングパンツを買いに行ったのだ。 俺の買い物は、偶然によって、手に入れることをよしとしている。 俺の選んだパンツのサイズは、Sがジャストで、欲しいと思っていた色がネイビーだったんだけれど、ネイビーがなく、黒しかなかった。 以前だったら、迷わず、黒をチョイスして、ハイ終了だった。 
 彼女は、買いもんに関しては、妥協はしない口なのだ。 欲しいサイズを欲しい色で、手に入れる人。 すかさず、他の店舗にその色があるかを確認してくれ、恵比寿にあることが分かり、取り置きしてもらうことになった。 俺だけだったら、パンツの色は、間違いなく黒になっていた。 それでよいと思っていただろうし、いずれ気に入るのだ。 彼女と一緒に行ったことによって、色がネイビーに変わったのだ。 「あぁこーやって、ちょっとした判断が変化し、いろいろな物や、ことが変化してゆくのだ」 と思った。 

 俺には、凄い発見だったのだが彼女には、スルーされた。 ここら辺は、男と女の違いなのかもしれない。 心配されたり、したり、面白い。 二人して、行くところをチョイスする。 山に行くにしても、一人だったら、勝手に場所を選び、自分のペースで、登り、帰ってくる。 二人だと、相手のペースを考えて、場所を選び、工程を組み立てる。 

 先日、小学生の頃からの友人Iに会った。 家族を持ち、子供たちも色々問題を起こし、父さんとしてのレベルもアップしているようだ。 彼女と出会うまでの過程を手短に説明した。 突然、声が大きくなり、「良かったな!」 と一言。 「お前、一つ目標が達成できたじゃん」 と言われた。 さて、俺はそんな目標を作ったか? 「お前、家族を作りたいって言ってたじゃん」 忘れてた、そんなこと言っていたな。 俺は、家族を作らなければいかんのだ、忘れとった。 

 だからといって、結婚を決めたというわけじゃないぞ! それは、次のステージ。