虚空を見上げる

 普段、何気なく生活をしていると、死ぬなんてことはこれっぽちも思わない。みんな、そうなんだろうな。俺の見知っている人が亡くなると「あぁ人ってやっぱ死ぬんだ」と気づく。仕事に間に合うように起きて、いつもの電車に乗って職場に行き、滞りなく仕事をこなして帰ってくる。下らんことに悪態をつき、上手くいかなかったことに腹を立て、生きていることに感謝なんかしない。

 親友が死んだ。友人が死んだことは今までなかった。家族は見送っている、友人と呼べるやつを見送るのは初めてだ。ガキの時分から一緒に遊んでいて、多感な時期、金も使わず、一緒にいるだけで楽しかった、兄弟を失う悲しみを始めに味わった、お前らしかった結婚式、俺たちの中ではじめに家族を持ち、それでも途絶えることなく俺たちと時間を共有してくれた。語り始めると限がない、掛け替えのない俺たちの時間だ。

 待ち合わせの時間、必ず先に着いていて、ニコニコ笑いながら「よっ!」と声を掛ける。もうその声も笑顔も見れんのか。おふくろが以前言っていた「人が一人いなくなるって大変なことなんだ」

 この世から消えちまった、世界のどこを探してもいない。俺の知り合いがいなくなると、必ず自問する。「いったい、どこに行っちまったんだ」

 俺の中には、後悔だけだ。何故、みんなを集めなかったのか、仕事が忙しかったから、疲れていたから、家族との時間を作っていたから、理由はいくらでも作れる。集めりゃ良かったんだ、ごめんよ。お前を知っているヤツは、最高の友だったというだろう。

 

PS、おふくろに会ったか?多分、来ちまったことに小言いうだろうが温かく迎えるだろう。俺たちも順番にそっちに向かう、誰が先に行くかは分からないけれど、待ってろよ。