Henro walker 5月15日

 雨のお蔭で、みんな出発を躊躇している。 止みそうで、止まない。 レインウエアを着るか、着るまいかを迷っているのだ。 次の宿は、山を降りた辺りにある。 なべいわ荘に泊まるのだが、そこを逃すと、そこから更に数キロ先に向かわんと宿はない。 一山越える事になると、10キロ近く歩かなければならない。 

 飯を食っておらんスナフキンが、「先ほどのお礼に黒飴をどうぞ」 と、彼にとっては、命の飴を恵んでくれた。 ありがたく頂く。 お遍路も、前半戦、みんなそれぞれデータ収集の時だ。 一つ一つ学習し、最期の寺に向かうのだ。 学習したことを翌日に使うことになる。 

 スポーティーなおじさんが、「ここから10キロは、歩かなければならないから、先に出ます」 「気をつけてください」 レインウエアを着込み、去ってゆく。 叉、どこかの寺で会うかもしれない。 準備万端、レインウエアを着こんでおったメガネをかけた女性が出発。 「なべいわ荘に行って、風呂の準備をお願いします」 と、お坊さんが声をかけた。 この人たちも、なべいわ荘なんだ。 ちょっとしたコミューンが出来上がりつつあった。 初日から、一緒だった女性に 「今晩、どこに泊まるの?」 と聞いたら 「あたし、なべいわ荘」 「じゃあ、一緒だ」 コミューン完成! 

 外を見ると、まだ、雨が降っている。 諦め時だな。 俺は、中からレインウエアを出した。 遂に着る時がやって来たか。 下まで着込むほどじゃないと思い、上だけ着込んだ。 みんな、一緒になべいわ荘だ。 ゆっくり、下山しようか。 俺と、お坊さんが準備OKで、最初から一緒の女性がレインウエアを着込むのを待った。 「すいませんねぇ」 不慣れな手つきで、リュックから、レインウエアを出す。 俺のようにリュックに仕込む時に順番考えたり、出しやすさ考えるのは、普段から使っている輩だけだ。 まだ、午後1時だ、時間はたっぷりある。 

 みんな用意が出来、出発する。 この雨の感じは、間もなく止みそうなんだけれどなぁ、タイミングが微妙だな。 「ここから、5キロほどで、着く筈だから、1時間半かな」 そうなんだよなぁ、この天候と、荷物を背負うと、そんなもんだな。 とりあえず、登坂が終了したから、気分的が楽になった。 

 お遍路で、一緒になると、何気に気になるのがみんなの持ち物だったりする。 みんな、それなりにこだわりを持ってチョイスしているから、気になるのだ。 レインウエアにしても、それぞれである。 「そのレインウエア、パタゴニアじゃん! 高かったんじゃない?」 初日から一緒の女性が着ておった。 パタゴニア高いんだよ。 以前は、そんなでもなかったんだけれど、気づいたときにゃ、高くなっておった。 俺も、以前、パタゴニアのパンツを履いておったんだけれど、今じゃちょいと高くて、頑張らないと手が出ない。 
 「セールで買ったから、そんなでも」 いやいや、セールでも高いんですよ。 勿論、ゴアテックス。 俺が大概、目が行くのは、シューズにリュックだな。 シューズは、ハイカットか、ローカットか、リュックは、機能性と、メーカーに目が行く。 好きだからね。 

 雨は、シトシトと降っている。 このパターンは、宿に到着すると、止むってヤツだ。 

 黙々と、一人で、歩くもんだと思っていたから、ここで、方向性が変わってきた。 3人で、喋りながら歩いておった。 前日は、どこに泊まったの? とか、雨天時の荷物の守り方とか、お互い情報の交換をする。 各人、目的を持っており、通過点は一緒、情報交換によって、旅を有意義にする。 なっ? ロールプレイングゲームみたいだろ?