Henro walker 5月15日


 俺たちは、いそいそと、なべいわ荘に入ってゆく。 「すいませ〜ん」 「は〜い」 と、おかみさんらしき人がお出迎え。 きつかった焼山寺も、終わっちまえば、只只爽快だったりする。 今は、風呂に入って、飯を食いてぇーと思うだけである。 部屋に案内され、靴下を脱いで、ビックリした! 前日、マメが出来ておったから、絆創膏貼って、山に臨んだのだが、絆創膏ぶっ飛んでいて、マメの皮がなくなっておった! 普通だったら、痛くてしゃーないのに皮がツルンとしておって新しい皮が出来ておった。 ちょっと不思議だった。 マメが出来て、皮が強制的に向けてしまうと、真新しい皮膚がピリピリしながら出てくるんさ。 それを防ぐために針で穴を開け、水を抜き、絆創膏を貼るのだ。 不思議だなぁっと、ちょっと狐につままれたような感じだ。 

 さて、今日は、洗濯をしないと着るもんがなくなる。 お坊さんが言っておったが 「着いたら、速攻で、洗濯を始めるんだ、みんな洗濯しようとするから!」 行ったら、既にお坊さんが陣取っておった。 「今からだと、50分後に終わるから、連絡するよ、お風呂は、4時半からだよ」 仕事がそつない。 

 部屋は、天井が高く、丈夫で、他の部屋と繋がっておる作りだった。 さすがに山だけあって、ひんやりとしておる。 身体が冷えやすい俺は、服装に気を使わねばならない。
 着替えて、荷物の整理をする。 持ち帰ったゴミや、洗濯もん、レインウエアを干して、ケースに入れる。 お約束の茶菓子が置いてあるので、手を伸ばす。 疲れておるときに甘いもんは、良いねぇ。 飲みもんがなかったから、ブラブラとバス停まで戻った。 自販機が確かあったはずだ。 アクエリアスを買い、周辺を眺める。 誰も居らん! 

 洗濯機も空き、洗濯をする。 一通り全部、洗濯しようと思い、詰めこむ。 3日目で、山を越えて、いい感じに汚れたからな。 トレッキングパンツも、ここらで洗っておかんとな。 ロンTは、1枚しか持ってこなかった。 もう1枚持ってくるんだったと、後悔した。 多少、暑くても、日差しを避けるために長袖は必要だな。 

 洗濯が終わり、風呂に入ると、飯が待っている。 なんといっても、これが一番の楽しみになってくる。 18時30分食堂に集合! 宿泊者が集まってみると、そこそこ混んでいた。 10人強居ったかな。 あとから、一人、おじいちゃんがやってきた。 聞くと、十数回お遍路をやっており、今回は、チャリンコにて周っているのだ。 おじいちゃんだから、峠道を多い四国はつらいので、電動式チャリンコを自前で改造し、複数の電動機をつけ、周っておったのだ。 ビックリだ。 

 メニューは、焼いた川魚に天ぷら、刺身に器もんが3つ。 自炊でさ、何品も料理があるってことは、まずないよな。 メインがあり、あと、ちょこちょこっとおかずがある感じだ。 それを考えると、ここ数日の夕飯は、超豪華版である。 飯を食いながら、情報交換をする。 まずは、今日の焼山寺の山越えをお互い讃えあい、これから先もまだ、こんな山があるかどうかが焦点だったりする。 
 「一番つらいのは、この焼山寺だよ」 と、3回お遍路を巡っておるおじさんが言っておった。 「よし、こっから先は、気を抜いていけるぞ!」 と、心の中で、呟いた。 

 飯を食い終わり、話をしておったら、俺の斜め前に座っておった焼山寺のWINNERメガネの女子が、しきりに膝を摩っておった。 「膝痛いの?」 って、聞いたら 「ちょっと痛い」 ここで、膝が痛いのは、つらいもんがある。 「バンテリンだったら、持ってるけど、使う?」 「いいんですか?」 「持ってくるから待てて」 こんなとこで、バンテリンが活躍するとは、思わなんだ。 

 持って来ちゃいるけれど、この手のヤツが、目まぐるしく効いたということはない。 だから、一応気休め程度で持ってくる。 テーピング、ワセリンは、セットで持ち歩いているけれどね。 「効くといいね」 バンテリンを手渡す。 遍路や、山や、日々、ノルマをこなさなければならない旅は、基本翌日にダメージを残さないというのが、原則だ。 残ってしまうと、まず、回復は見込めないからだ。