落語は、ガキの頃から触れておるから、知っている気になっておる。 が、ちゃんと観たことはない。 日曜日に「笑点」がやっているから、多かれ少なかれ触れておる。 でも、ちゃんと寄席に足を運んで観たことはないだろ?
落語の笑いは、寄席に行って、その空気に触れないと、笑えないと聞いた事がある。 そんな気はするけれど、それがどういうことなのかは、分かりづらい。 そんなことを長いこと漠然と思っていた。
先日、電話で、彼女と話しておって、俺が 「落語って興味あるの?」 って聞いた。 こないだデートしたときに落語のDVDや、CDを手にとっておったから、興味あるのかな? と思ったわけだ。 「興味あるんだけれど、行ったことない」 「俺も、行ったことないから、行ってみようか」 ということになった。
寄席というと、まず頭に浮かんだのが末広亭だ。 新宿にあり、メジャーだな。 そして、浅草演芸場。 ここは老舗だ。 そして、池袋演芸場である。 ちょっとマイナー。 彼女に家に池袋が近いので、池袋演芸場にゆくことにする。
寄席は、昼時に始まり、夕方までが、前半戦で、夕方から宵の口までが後半戦出〜発! という流れ。 凄いのが昼時から入って、夜までおっても料金一律なのだ。 飯持って行ったり、中抜けしたりと、自由が効いたりするようだ。 この世知がないご時世、素晴らしいシステムではないか!
11時に待ち合わせをし、軽く飯を食って、寄席に入ろうということにした。 12時に開場なので、ちょっと前に演芸場前に行った。 「沢山、人が並んでいたら、どうする?」 とか、ベタな会話をしながら、チケット売り場を覗き込むと! おばちゃん軍団が、券売所で何やら、やっておる。 「5、6、7人でぇ、○×さんこっち来て、こっち来て!」 ありがちな調子でやっておった。 後ろに並んで、その騒動を見ておった。 「こちらの方、先に通してあげて」 と、一人のおばちゃんが言い、モーゼの十戒のようにおばちゃん左右に割れて、「どうぞ」 「訳、判らないんですけど、券売の人大丈夫なんですか?」 まったく意味不明のまま、二人分のチケットを購入。 一人、2500円也。 これで、昼から、夜まで居られるのです。 浴衣か、着物で来ると、500円割り引いてくれるのです。
番組表を渡され、地下の劇場へと向かう。 降りると、ちょっと名画座っぽい感じ。 もぎりが居って、お菓子類が売っていて、キャラクター商品が置かれている。 なんとも、いい雰囲気である。 始まりは、12時半なので、順調に入ってしまったので、30分近く、時間がある。
二人して、「ははぁ、これが演芸劇場なのかぁ」 っと、周辺をマジマジと見ておった。 そのうち、お囃子の太鼓の音が、ズンドンズンドン始まった。 あれだ、ライヴ前の耳慣らしの音みたいな感じだ。 これが、結構自由気ままに叩いていて、ロックっぽかったりするんだ。
二人で、「へぇ」 とか思っていたら、「あなた方、大学の落研の人?」 とか聞こえる。 もしかして、俺たちに話しかけてる? と、思い、後ろを振り返ると、おばちゃんが俺たちに話しかけていた。 「いや、違います、二人とも始めて寄席に来たんです」 「あら、そうなの」 と、そっから、速射砲のように話し続けた。 「大学の落研」 は、只単に切欠にすぎんかったのだな。 この話は、始まりのお囃子が鳴るまで続いた。
始まりは、前説からなんだな。 前座というヤツだな。 耳慣らしがあり、そこから本格的に始まるという流れ。 番組を見ると、右から順番に始まり、当然、最期が取りである。 右脇に例の撒くって、名前が書いてあるのがあるが、名前しか書いておらず、屋号がないから、判らんのだ。 番組は、小さく屋号が書いてあるから、老眼の俺にゃよー判らんのだ。
お囃子のチントンシャンチトシャントンってヤツは、いいな、物凄く雰囲気がある。 テレビとは違い、生で、演奏しているから、「おぉやってるやってる」 って感じ。
前説が終わり、前説をやった小僧さんが、座布団をひっくり返したり、名前を捲ったりしていた。 あれだ、山田君の役割だな。 1番目が落語で、次に三味線の小唄なのかなぁ、芸者のおねえさんがやる、あれね。 生まれも育ちも住まいも向島のちゃきちゃきの下町のおねえさんでした。 粋な方ですね。
そして、出番を休んだ噺家がおり、代わりで、訳も判らず出てきた人が二人、一人は、三遊亭小遊三の弟子と判明。 如何せん、情報が殆どないから、話の箸端で、「あぁそうなんだ」 って感じである。 落語の合間合間に芸事っていうのかな、それが入る。 一つが漫才で、もう一つが海老一染之助・染太郎みたいな、バランス芸ね。 あれもさぁ、凄さは、目の前で見ないと判らないよ。 ホント、凄いんだから、「いつもより、多めに回っています」 凄いことなんだよ。
2時間ほどやって、中入りが入る。 トイレ休憩だな。 俺、長時間座っていると、腹が張ってくる方だから、辛いんだ。 隙を見てトイレに行こうと思っていたんだけれど、隙間なくチントンシャントンやって、次から次へと出てくるから、タイミングが計れんかった。 そして、ケツが痛い! 映画だったら、ここらで終了なのだが、後半戦出発である。 中入りも、何か、あっという間に終了した気がする。
そして、古今亭寿輔のとき、事件は起きた。 俺と彼女は、前から2列目の真ん中あたりに陣取っていた。 そこしか空いてなかったから座ったのではなく。 どうせ、見るのなら、真ん中がいいだろうと思い、陣取った。 平日の昼間のせいもあるが、かなりのガラガラだった。 「パッと見て、ガラガラなもんだから、椅子に向かって話してんじゃないかってくらいで」 と、古今亭寿輔に弄られるくらいにガラガラだった。 この古今亭寿輔は、いじくり落語家だったようで、観客をいじくって、笑いを取っておるタイプだった。 あれだ、三平師匠!
出てきて早々に 「真ん中のおねえさん、そんなに笑われちゃうと、こっちも困っちゃう、あまり期待しないで」 と、こんな調子で、ずーーと、いじくられまくっていた。 あと、寄席の特徴として、テレビで出来ないネタをやる。 エロネタとか、北C鮮ネタとか、客層とかでも、出し物が変わってくるのかもしれない。 こりゃ確かに生もんだよな。
たけしがテレビで、破天荒に壊しまくるネタは、演芸場ネタなのかなっと、思った。 規制や、ルールで、がん縛りにされると、芸としての面白さがなくなるんだろう。
そんなことをケツが痛くって、痛くってしゃーない状態で、考えておった。 取りが出るころには、手を上げて 「すません、ケツが痛いんで立っていていいですか?」 と、噺家さんに言いたくなった。
いやぁ、この時世に2500円で、朝から晩まで、笑わして楽しませてくれるとこなんて、ないよ。 終わってから、飯を食いながら、末広、浅草と、とりあえずは、順番に観に行ってみようか? と話した。 それぞれ、空気が違うんだろうから。
個人的の面白かったのが、「海老蔵なんて、いっつも満員の所でやっているんだ、一度、池袋演芸場に立たせたないねぇ、この椅子に向かって芸をすることがどんだけ大変か!」 大変ですよね。 御後が宜しいようで チントンシャントチン!!