Henro walker 5月15日

 とりあえず、腹減った、飯食いてぇー。 朝から歩いて、刺激物を一切取っておらんから、腹が減る、飯が美味い、身体がしっかり疲れるときてる。 良いこっちゃ。 休憩後、10分もすると、再び、疲れてくる。 こりゃ、マジに疲れてきているのかな? 
 山道が途絶え、集落が見える。 山と山の間に少しばかりの平地に数件の家が建ち並んでおる。 上から見下ろすと、八つ墓村の落ち武者が集落を見据えておる気分だ。 凄いよなぁ、何故、こんな山奥に集落を開いたんだろう? みんな、やっぱ落ち武者の子孫? 殆ど、民家の中を抜けてゆくように集落を突っ切ってゆく。 人が住んでおる生活感はあるのだが、人には出会わない。 そして、再び、強烈な登坂が現れる。 これが最期の登坂だ。 やれやれ。
 
 やっと、舗装された道が出てきたときには、「やっと、終わる」 と思った。 山道を抜けた正面に物凄いデカイ修羅の像なのかなぁ、それが出迎えた。 石仏なのだろう。 こんな山奥にこんなデカイもんを持ってきたのかぁ凄いなぁ。 石仏が現われたら、もう着いたろっと、思うだろ? ここから更に数キロ歩かされることになる。 

 山門があり、焼山寺へ向かう階段が見える。 12時である。 うーーん、結局5時間かぁ、もうちょっと早く着くと思ったんだけれどなぁ。 ここまで来ると、もう登らんでいいという思いが足取りを軽くする、スタコラサッサと階段を上がってゆく。 待ってましたばかりに雨が降り始めた。 なんとも限が良いタイミングである。 標高700メートルにある焼山寺に到着。 

 階段を上り、本堂前で、とりあえず、背中に張り付いている荷物を降ろした。 いやぁ、すっとしたすっとした。 蝋燭灯して、線香上げて、賽銭入れて、納付をしちゃおう。 やることやんねぇと、ゆっくり出来ないからな。 線香上げていたら、ゴ〜〜ンと鐘の音が聞こえる。 一緒の登ったスポーティーなおじさんが鐘を突いていた。 山に響き渡る鐘の音、素晴らしい、ちょっとした達成感だな。 俺も例に倣い、鐘を突いた。 ゴ〜〜ン〜〜!! 生まれて初めて、鐘を突いてみた。 いやぁ、気分良いなぁ。 納経所の前にメガネをかけた女性が座っておった。 多分、先行で進んでおったメガネをかけた女性なのだろう。 結局、抜かせんかったな

 まず、自動販売機で、アクエリアスを買った。 なーんも気にせずに水分を摂取できるのは嬉しい。 一気に半分を飲み干した。 いつものようにトイレを済ませ、売店を見ると 「うどんあります」 の張り紙。 お接待でもらったおにぎりと、うどんのツートップで昼飯にしようと思い、中に入る。 強くなりそうでもあり、止みそうでもある、中途半端な雨が降り続いていた。

 「すいません、うどんください」 「はい」 といって、お茶を持ってきてくれた。 一口飲む、玄米茶だ。 美味しい、身体に沁みるようだ。 うどんが来るまで、何もやる事がないので、外をぼーーっと眺めていた。 疲れのせいか、何も考えず、無心に外を眺めていた。 

 「はいどうぞ」 と、うどんがやってきた。 「すいません、おにぎりも一緒に食べていいですか?」 「はい、どうぞどうぞ」 うどんだけじゃ、腹が満たされないので、うどんと一緒におにぎりを食べる。 まずは、うどんをすする。 美味い!! 食いもんを欲しがっている胃袋が喜ぶのが分かる。 スープを飲む。 薄味だがしっかりと出汁が効いている。 なんともありがたい昼食だ。 そして、さくら荘で、頂いたおにぎりを広げる。 缶のお茶と、飴が付いていた。 おにぎりの包装紙に宿主からの手紙が添えられている。 噂に聞いていたが、本当に手書きで書かれている。 凄いなぁ、毎日客が違うであろうにちゃんと書かれているのだ。 これは、真心だよな。 ありがたくおにぎりを頂く。 

 食っておると、スポーティーなおじさんが入ってきた。 次に飯を食っておらんスナフキン。 「先ほどは、どうも」 と会釈される。 無愛想なスナフキンは、どっかにいってしまった。 
 そして、メガネをかけた女性にやたら、お喋りなお坊さん(本当にお坊さんだった)、初日から一緒だった女性、ポンチョを着た大柄な男性と、順番に入ってきた。 雨は相変わらず、降っている。