アンチヒーロー

 毎年、アカデミー賞は、手堅い作品がノミネートされたり、色物が最有力として出てきたりと、時代の流れや、作品の完成度が受賞の方向を変える。 アカデミー賞投票権を持っているのは、アカデミー賞に関わった多方面な人だったよね。 だから、蓋を開けてみんと判らん部分がある。 毎年、毎年、色んな作品が、アカデミー賞の殿堂入りを果たす。 

 欲望、快楽、拝金主義やら、色んな束縛があり、そいつを根源として、人は、なんだか知んないけれど生きておる。 自堕落に酒とドラッグと女の日々を送っていた、にわかロデオカーボーイロニー・ウッドルーフは、同じように自堕落なねえちゃんから、AIDSを頂いてしまう。 1980年代、AIDSに対する偏見は、酷く、ホモしか罹らんと思われておった、そーんな時代のお話し ダラス・バイヤーズクラブ

 おやじの仕事を受け継ぎ、電気工事をしながら、ロデオに出て、薬やって、女やって、酒かっくらって、ダラダラ生きておったロン。 いきなり、ぶっ倒れ、「はい、あなたは、AIDSです 余命30日」 っと、言われてしまう。 ホモでもねぇのに何で、俺がAIDS? 
ドラッグで、ラリった頭で、ボンヤリ、ロンは考えた。 「こんなこと、まるっきり、受け入れられねぇ!!」

 病院へ行き、薬を処方してもらおうとするが、まるっきり、効かん薬ばっか処方される。 こんなんじゃ、俺、死んじゃうじゃん!! ロンは、再び、考えた。 認可されていない薬を使えば、良いんじゃん!! 

 死を目前にして、突然、人生が機能する。 メキシコに向かい、不法で、薬を仕入れてきて、AIDS患者に売ろうとするも、ホモセクシャルな連中と、接点がないから、なかなか捌けない。 毛嫌いしておったゲイのレイヨンと手を組みダラス・バイヤーズクラブを発足、入会すると、もれなく不法で仕入れたAIDS特効薬を進呈! 

 この作品、マッチョが売りだったマシュー・マコノヒーが、20キロを減量し、役作りをしている。 凄い! そして、同じように減量したレイヨン役のジャレッド・レトの両名が素晴らしい。 アカデミー賞レースに絡んでいたのは知っておったから、観終わった瞬間、マコノヒーが獲るであろうとを確信した。 

 アメリカ人が好むドラマは、自由を勝ち取るアンチヒーロー。 社会や、法律に面と向かって、喧嘩を売り、毛嫌いしておったレイヨンの死に悲しみ、怒る! 人間臭く、へこたれないロンに感情移入してゆくのだ。

 自由をよー理解しておらん、日本人にとっちゃ、なかなか好みが分かれる。 俺が好きな本、サン=テグジュペリの 「人間の土地」 の一編に奴隷として甘んじてきた者を自由にしてやり、大金を与えるのだ。 彼は、その大金を街中で、ばら撒き 「やった!! これで、自由だ、自由なんだ!!」 と、歩き去ってゆく話しがある。 本当の自由は、こーいうことを言うんだと思う。 何ものにも束縛されずに生きるということ。 どーしても文化の違いで、それを日本人は、理解しづらい、俺を含めて。 

 マコノヒー、主演男優賞おめでとう。 受賞は、当然だ!!