仕掛けて、仕損じなし

 時代劇は、やはり、昔の方が面白い。 確かに話しの内容は、今じゃ使い古されたネタだけれど、役者がいい演技をする。 殺陣が素晴らしい。 そして、セットと、ロケーションが素晴らしい。 大映、松竹、東映かな。 東宝は、王道もんしか作らないから、若干、娯楽性に欠けるのである。 

 今は、時代劇が作られんよな。 金と時間が掛かるから、嫌われるんだろう。 水戸黄門や、大岡越前江戸を斬る鬼平犯科帳辺りが、終わっちまって、NHKだけになった。 NHKでも、金曜時代劇が終了したんだったよなぁ。 
 時々、気負って作るんだけれど、如何せん、普段、時代劇なんぞやらんから、殺陣、言葉遣い、振る舞い、尽く駄目だったりする。  

 70年代までの時代劇が、時代劇らしいもんが作られた最期だと思う。 丁度、その頃、テレビでも、時代劇の名作が作られた。 「木枯らし紋次郎」 と 「必殺シリーズ」 で、ある。 紋次郎は、監修に市川混を使っておったから、毛色が違っておった。 必殺は、当時の時代劇の映画が作られなくなり、行き場所を失った監督たちが集まって、作られた。 金はないが、クオリティーは、高かった。 
そんな、「必殺シリーズ」 も、本当に面白いと感じるのは、「必殺仕掛人」 と 「必殺仕事人」 のみだなぁ。 仕掛人に関しては、池波正太郎の原作だから、話しがしっかり、出来とる。 梅安に左内のコンビである。 一途最初のコンビは、緒形拳林与一である。 他にも色々演じられているけれど、この二人が最高だ。  元締めが山村聡 このあと、70年代の話題作に出演する緒形拳のエロさの原点だな。 浪人の左内役の林与一が、カッコいいんだ。 舞踊をやっているせいか、和の独特の色気がある。 そして、殺陣がいい! これ、重要。 剣の達人なのに殺陣が駄目じゃー話にならん。 この仕掛人の功績は、影の使い方。 仕掛人が音もなく現われる描写を影を使い、表現しておる 「志村! 後ろ後ろ」 の世界である。 

 「必殺仕掛人」 までは、依頼人が幸せになるパターンがあるのだが、それ以降は、依頼人は、不幸のズンドコに落ちてしまい救いようのない、暗〜い話しが多い。 そして、池波正太郎作品の定番、美味しい食いもんが出てくるのも良い。 軍鶏鍋、どじょう鍋が、なんとも美味そうに食われる。 

 あまり知られていないが、この緒形、林のコンビで、2本仕掛人の映画が撮られている。 梅安、佐内ではなく、梅安、小杉コンビである。 実は、もう1本あり、梅安を田宮次郎が演じておる。 こっちは、もっと知られておらん。 本当は、緒形、林で作りたかったのだが、スケジュールが合わんかったんじゃなかったかなぁ、やっつけ仕事とは、言わんけれど、もうちょっと、待っても良かったんじゃないかなぁ。 田宮の梅安も悪くないのだが、長く演じている緒形には敵わない。 3本全部観ておるが、出来としては、テレビとさほど、変わらん。 オープニングに松竹マークが入るのと、セットが映画の大きなセットが使われているっぽい、そして、仕掛けられる方々が豪華。 ちなみに梅安蟻地獄で、仕掛けられる兄弟っちゅーのが、佐藤慶小池朝雄の強敵である。 
 最近、テレビドラマ、映画を観る時に思い描くのは、出ている連中の中で、誰が、佐藤慶小池朝雄、夏木勲、林隆三etcの隙間を埋めてゆくか? っちゅーことだ。 新手のバイプレイヤーは、岸部一徳兄ちゃん位しか思い浮かばんよ。 今、佐藤慶小池朝雄に対抗できる兄弟を演じられる役者っているか? 存命されておる役者さんでは、柄本明、一徳兄ちゃんで、兄弟役をやらせたら、無敵だな、うん。 

 今回観たのは、映画仕掛人シリーズ最終作 必殺仕掛人 春雪仕掛針

 力み過ぎて、カメラアングルに懲りすぎて、かえって見づらくなっておる。 そんな中で、「おぉ」 っと、思ったのが、銀世界の雪の固まりが、がらがらっと崩れ、中から梅安が出てくる。 これは、人間迷彩ランボーよりも先だなっと、思った。 仕掛けられるのは、定番岩下志麻!! 情念の絡んだ敵役といったら、岩下志麻か、小川真由美だった。 

 平成の役者と、昭和の役者の違いって、ここってときの凄みなんじゃないのかと思う。 緒形拳は、子供ながらに怖い人なんだと思ったもんなぁ。