凶悪

 山岳もんと、犯罪もんは、妙な中毒性があると思う。 「うわー、こんなとこ行きたくねぇ」 「何で、こんな残忍な事が出来るんだ?」 と、二度と読まないようなふりをして、再び、手に取る。 日々、色んな事件が起きておる。 ワイドショーは、時事ネタで、数字が稼げると思うと必死こいて、取材するけれどさ、旬がすぎれば、続報はない。 刑罰が決定してた時に放送されるくらいかな。 犯罪もんを読んで思う事は、ニュースや、新聞、ワイドショーで、言われていることは、事件の極一部でしかない。 ワイドショーだったら、格好のネタじぁねぇか? と思うだろ? テレビで、報道出来んことが多々あるんだよ。 報道規制や、倫理規制じゃなくって、あまりの残虐さで、内容を報道できない。 「北九州連続監禁事件」 は、その典型。 家族同士で殺し合いをさせるんだが、それが、小学生の子供にまで及ぶ、想像を絶する事件で、テレビで、まるっきり報道出来んかった。 全容知るためには、事件のルポが出るまで、判らんかった。 

 本になっちまうような犯罪は、オンリーワンの事件なんだ。 ある意味で、犯罪の天才であり、悪魔としか形容のしようがない。 共通して言えることは、人を虫けらのように殺せるということ。 人として、ぶっ壊れているけれど、人の皮を被っているもんだからさ、見分けが付かないんだよ。 そして、人を陥れようと考えて近寄ってくる。 そして、人を巧みに操る。 今回、読んだのは、「凶悪 ある死刑囚の告白」 

 これ、間もなく、公開される映画の原作でもある。 「凶悪」 って、映画がそれ。 若干、名前を変えたり、ふくらみを持たせたりしてあるようだ。 題名にもあるとおり、死刑囚の告白から始まる。 死刑が確定しつつある受刑者が、「事件とは関係なく、まだ、殺人事件を犯し、その共犯は、のうのうと世間を闊歩している」 
 
 麻薬を打ち、女を一人ショック死させ、残りの二人を家に火を放ち殺そうとし、ヤクザを簀巻きにして、川から落して殺し、死刑判決を受け、最高裁で争っている暴力団員、後藤。 最高裁で、争っている最中、まだ、人を殺していると記者に告白をする。 最高裁で争っているのに殺人を告白するという相反する行動。 それは、主犯格の通称先生と呼ばれる殺人鬼を捕まえるためである。 殆ど、話しがミステリー小説だよ。 これが事実だっていうんだ。 小説の中で語れる残虐な行為は、僅かだが数センチ足が浮いているんだ。 だが、事実の残虐性というのは、足がしっかりと地に付いており、不快感の度合いが違うんだ。 人を虫けらのように思っているヤツは、こーいうことをするんだなぁと、思える。 
 闇の世界の住人っていうのかな、やつらとおなじ世界に入っちまったら、人として駄目だよな。 もぉー、太陽の下を生きることは出来んだろう。 

 この話しの凄いところは、警察さえ、確信を掴めんかった事件を記者が雑誌に告発し、追い込んでゆき、最終的に逮捕に繋げる。 余りにもレアなケースだ。 なんていうのかな、自分自身を戒めるために読むんでいるのかもしれない。 こーいうヤツになっちゃいけないって。