大人の遠足 その9

 17時に先行で、会場に着いた。 いつものよーにアーティストショップが大賑わいであった。 グッズには、あんま興味がない。 パンフレットに関しちゃ、映画さえも買わなくなった。 以前は、映画に行くと、パンフレット代も込みで、持ってゆく金を計算したもんだが、今は、まるっきり、興味がない。 DVDや、CSで見ると、真剣さがない、金払うとさ、真剣に見るよね、元取らなきゃいけないと思うから。 常々も思うが、金払わないと、その映画の正当な価値はわからないね。 
 ライヴに関しちゃ、アーティストの心意気が重要になってくる。 どんだけ、ファンを大切にしているかということと、毎回、真剣勝負かっちゅーことだな。 エアロに関しちゃ、そーいったもんが感じないんだけれど、それは、俺だけか? どーも、面白くねぇ。 いつの間にやら、アメリカンロックの王道みてぇーな顔してやがる。 

 配られておった来日予定アーティストにKISSが入っておった。 数年前、フェアウェルコンサートと称して、煽ったのに今更、来るのか? っちゅーのが俺の印象。 まるで、ヤワタヤの終わらない閉店セールと良い勝負だ。 乗りとしては、シルク・ドゥ・ソレイユのサーカスが町にやってきたと同じだ。 

 以前は、金があったら、何でも観にいったけれど、今は、払う金額に見合ったもんを観せてくれるか? というのが俺の頭の電卓がはじき出す。 そーいった意味で、KISSの12500円は、価値がないのだ。 すまん。 KISSは、「クレイジーナイトツアー」 は、良かったな。 エリック・カーも元気だったし、KISSも、バンドとして活動しておった気がする。 ポールが演出で、ぶっ壊したギターだけは、引いたな。 そーいった意味では、リヴィング・カラーのヴァーノン・リードが、PAが下手っぴで、頭に来て、マイクスタンドにギターを擦り付け、雑音を出して、PAを指差して 「おめぇよぉーちゃんと、やれよなぁ」 っていうのは、演出ではなく意味がある。 

 俺とHは、先行して、パイプ椅子に陣取っておった。 俺は、耳慣らしの音源に何をやるか? っちゅーのに興味がある。 そのアーティストが好きな楽曲を流すんだから、ルーツであったり、控え室で、ガンガンに流しておるCDかもしれん訳じゃん。 数年前から、誰も彼もAC/DCだろ? なんかさ、AC/DC流さないと駄目なアーティストみたいな風潮じゃん。 逆に 「お前もか!」 って、感じになる。 「ヴァンヘイレン、お前もか!」 どー考えても、デイヴの策略臭いんだよなぁ、エディは、人の曲聴かないんだよ、アレックスは、JAZZかもしれないけれど、分からない。 ウルフィーは、最近の流行を聴いているんじゃないのかな。 デイヴは、ブルースにモータウン、そして、最近の流行の傾向だな、デイヴは、そーいう人だから。 なんかとって付けた印象を受けて、ちょっと引いた。 

 そん中をちょい酔い加減のKが登場。 「こっちこっち!」 俺ら見付けて、席のほうへ来る。 当初、どっか空いている席で観ていると言っておったのね。 デカイから、周辺に迷惑掛かるからと、妙な気の使い方をする。 そんな気をつかわんでも、周辺各所に配置された巨人が、にょっきり出てきたから、大丈夫ったんだけれど。 「いやぁ、寝てないから、ヤバイ」 そりゃ、寝てないところに酒を入れたからじゃねぇの? 
 その巨人のお蔭で、正面のモニターでしか、確認出来んかったらから、首をちょい上げで、観なきゃならず、首が痛くなった。 しかし、40越えてから、2時間のライヴがなかなかつらい。 1時間半位までは、順調なんだけれど、そこを越えてくると、マラソンでいうところの30キロ越えに近いもんがある。 腕をブンブン振ったり、首をガンガンヘッドバンキングするなんちゅー事は出来ん。 それ考えると、ステージ立って、ギター弾いたり、ドラム叩いたり、全力で歌うのは、凄いよな。 スポット当たりゃ、暑いだろうし、正面にゃ観客でしょ、アレックスなんて、還暦だで、元気だよな。 あの元気さを見ると、こっちも一生懸命聴かなきゃ駄目だと思うんだが、身体ついてこずである。 
 結局、デイヴのショートフィルムまで、飛ばしたんだよな。 俺は、チャーンスと思い、座り、休憩。 このショートフィルムに関しては、色々噂が先行しておった。 CDの特典についてくるDVDの犬とのフィルムだとか、各公演で、やるもんが違うとか、小錦とだけ、書き込みがされておったのもあったな。 こん中で、正解は、小錦なんだけどな。 ヤクザの親分役で、小錦が出てくる。 そして、銭湯にやってくるヒットマンがデイヴ! キーワードは、いちご牛乳と、「ツキニカワッテ、オシオキヨ」 だな。 休憩タイムにこんな面白いビデオ流すから、休めんかったろ。 

 大阪公演は、東京ドームに比べると、1曲少ない。 「ミーンストリート」 なんだけれどな。 理由は、どうも、体育館が市営だから、21時が終了と決っておるらしいのね、だから、間一髪いれずにアンコールで、ジャンプをやったんだ。 デイヴが 「Last one last one」 と、念を押しておった。 
 終了後、照明が点き、いつもの 「本日のヴァンヘイレン大阪公演は・・・」 ってヤツが流れた。 夢の終わりを告げる寂しいアナウンスである。