抜かされたって良いじゃない だって人間だもの 

 山を走るっちゅーのは、面白い。 まぁ、個人的な意見だけれど。 空気は、旨いし、景色は良いし、喧騒から離れて、気分転換になる。 だが、レースとなると、ちっと違う。 楽しさもあるが、苦しさもある。 沢山の人たちと走るわけだ。 気持ちの中では、楽しみながら走りゃいいと思っているけれど、半分は、そーは思っていない。 そこそこの記録で走ろうという思いがあるんだな。

 いつも言うけれど、只、走る行為が好きなら、街中や、山を好きなように走れば良い。 レースに出るというのは、それだけではないんだ。 どこか競い合うという気持ちがある。 

 彼女から、「どんな気持ちで、走っているの? 楽しいの?」 と聞かれて 「昨晩は、嫌で嫌でしようがなく、朝になって電車に乗っちまえば逃げられないと思い、スタートラインに立つと楽しい」 どんなレースでも、俺は、ちゃんと完走できるか不安を感じる。 それをなくすために練習をしているくせして、いつも 「完走できるかなぁ」 と不安を覚えるんだ。 いつも、走っているくせに何故、そんなことを思う? と、言うかもしれないが、これは、俺の性分だな。 

 今年も、高尾山を走る日がやってきた。 走るということに嫌悪感を覚える輩にとっては、山を走る何ちゅーことは、言語道断なのだ。 平地を走っておっても苦しいのに何故に山? 高尾を走る前にハーフを1本走っておけば、かなり楽なんだろう。 いつも思うのだが、秋口のスタートは、高尾山からとなっておる。 いつも走っておっても、苦しさの度合いってあるじゃない? 皆さんの思っている通り、山の方がキツイ訳で、それを走るためには、そこそこの準備ってもんが必要なんだが、そこはお約束の練習不足ですよ。 調整不十分で、走るわけだ。 

 月曜日7キロ走って、火曜日15キロ走って、木曜日15キロ走って、土曜日休養、日曜日レースという突貫調整だ。 身体も疲れておるから、無理はこれ以上出来ん。 休養と、食事と、睡眠、これが大切なのだが、食事は、そこそこ気を遣っておるけれど、休養と睡眠が曲者で、ちゃんと取らんかったりする。 そこら辺は、彼女に怒られるので、取るようにはしておるのだが、どうも、俺は、疲れの自覚症状が内容で、疲れ果ててから、「あれ? なんか疲れているんじゃない」 と自覚する。 だから、最近は、何かにつけ、「大丈夫 疲れてない?」 と質問される。 如何せん、自覚がないもんだから、「大丈夫」 と答えるが、信用されていない! 

 高尾まで、自宅から、2時間ほどで行く。 新宿で、彼女と待ち合わせをして、会場に向かう。  今までは、一人、とぼとぼレース会場に向かい、一人、とぼとぼ帰ってくる。 一気に数段の進歩である。 今回、いつもの高尾山の15キロのレースに出る。 コースが、知っている範囲で、3回ほど変わり、ここ数年は、国有林エリアを走っているのかな。 だから、登山客と遭遇することもなく、快適に走ることが出来る。 

 去年も来たから、高尾に着いても迷うことなく、送迎のバス停留所に向かう。 みんな、既に走る気満々の格好である。 ランニングウエアにサングラスを頭の上に乗っけている。 トレイルの場合は、サングラスは必要なアイテムである。 日差しで、山道が見えなくなったり、枝が突然目の中に入ってくることもあるしな。 色の入っておらんグラスでも良いのだ。 バスに乗り込み、皆さんのアイテムに目をやると、高そうな時計をしておったり、サングラスは、レイバンだったりする。 俺は、既に20年近く使っておるタイメックスだ! さすがにパッキンが逝かれてきて、ライトも点かん時がある。 変え時だな。 賞味期限ギリギリのもんばっか持ってきた。 まず、シューズ! 先日、新しいシューズを買ったんだけれど、スピードが出せるタイプに変えた。 同じモデルばっか使っておったから、そろそろ変えてみようかなぁっと思い、変えたのだ。 

 レースタイプって、ビギナーが使うタイプよりも安いんだよ。 何故なんだろうって、常々思っておった。 今回、買って分かった事は、クッションが爪先側に入っていないんだ。 ビギナーの履くタイプは、前と後ろにクッションが入っており、それで、足を守っている。 その分、スピードが出ない。 レーサータイプは、爪先側にクッションがないから、蹴ることが出来るんだな。 当然、スピードが出る! そして、クッションが前面に入っておらん分、安いということだ。 

 さすがに山を走るとき、くたびれた気休めのクッションでも、入っておったほうが良いと思い、履き古した方を持ってきた。 もう一つ、ハーフスパッツがくたびれまくっているのを持ってきた。 本当は、レース前に買おうと思っていたんだけれど、良さげなヤツがなかったんだ。 結果、ステテコ気味になったスパッツを持ってきた。 まぁ、ずり落ちる心配はないから良いけれど。