バンテリン

 ここ一月ほど掛けて、ランニングフォームの改善をしておった。 楽に早く走れるようになるっちゅーのが目的である。 レースに出ると、軽〜く流すようにスピードを出して、お気楽に走り抜けてく輩が居る。 俺はっちゅーと、いつも七転八倒しておる、何故に楽に走れんのか? という疑問があった。 勿論、最初っから、終わりまで、楽に走る事が出来んことは分かっているけれど、サラ〜っと、走っている連中に比べると、俺の走りは、雲泥の差なのだ。 上手くいっておらんということは、何かが間違っておるということになる。 
 走り方を見直してみた。 それで、肩甲骨が稼動できるように背中を鍛える懸垂をやり、身体が倒れこまないように腹筋をやり始めた。 簡単に効果が出たのは、腹筋で、鍛えることで、実生活でも楽に上体を保てるようになった。 腹筋は、鈍感だから、いっくらやっても大丈夫という言葉を思い出し、暇だったら、やっておった。 さて、懸垂であるが、こいつは、効果が出るまでというか、ちゃんと回数をこなせるようになるまで、時間が掛かり、背筋という大きな筋肉だから、一度、ダメージを与えると、復調するまで、時間が掛かるのだ。 だから、日に3パターンの2セットにしておった。 これは、1セット目、限界までの回数をこなし、2セット目は、出来る回数をこなすっちゅーもの。 稼動域が狭かった肩甲骨が、負荷を掛けることで、稼動するようになり、ちゃんと動くようになってきた。 それによって、感じたことは、腕振りが駄目だったんじゃないか? ということだ。

 最近は、マラソンも完璧に市民権を得たもんだから、マラソンにおける腕振りの重要性は、やっているもんにとっては、当たり前であるが、ちゃんと出来るか? っちゅーと、出来ていない。 マラソンというと、走ってゴールするわけで、はじめに目がゆくの足だ。 足がしっかり、しておらんと、42.195キロは、走れん。 足ほどではないにせよ、腕も足と同じ時間、振り続けているわけだ。 そして、腕の連動によって、足が動くことも、最近じゃー当たり前だのクラッカーなのだ。 だが、俺の場合、それを感じる事が出来んかったのねぇ。 色々試行錯誤してみてはいたが、「これだ!」 っと、思えるもんがなかった。 
 あるとき、肩甲骨をグルグル動かしておったら、少し、コトンと後ろに下がったのだ。 下がることによって、背中が自由に動くようになった。 現代人ねぇ、かなり、肩に力が入っておるのね。 よく言われる 「はい、肩の力を抜いてぇ〜」 というのは、言葉の通り、やっているつもりでも、まるっきり出来ていないのだ。 それだけ、ストレスがあり、リラックス出来ないんだな。 
 そして、もしかしてと思い、これで、後ろに下げるように腕振りをやってみた。 胸が前に上がり、腰が前に突き出し、おっさんが走るときにマラソンのポジショリングになった。 「走りこんでどぉ」 というフォームね。 力んでおらず、リラックスした走りに近い、フォームになった。 カッコわりいなぁと、思いながらも、このフォーミングだと、すべてが手引書に書かれておる通りになるんだな。 
 肩をリラックスさせ、後ろに引くように振り、肩から前へ肩口を出さない。 骨盤は、若干前傾姿勢で、腕に連動し、動く。 肘で、ピッチを刻みながら走る。 これかな? と、思い、早速、このポジションで走ってみた。 
 走ってみて思ったことは、楽なんだ、息切れは、まるっきりしないし、呼吸も楽だ。 運足も円滑だ。 試しにスピードを上げてみた。 しっかりとスピードが上がる。 今までの走り方とは、まるっきり違う。 おいおいおい、腕の振りを変えるだけで、こんなに違うのかよ! はじめて、楽に走るを実感した。 だが、長〜い期間、慣れ親しんだ走り方からスイッチするのは、なかなか難しく、ある程度の距離を走ると、戻ってしまう。 再び、意識し、走り方を修正するという、型を定着する作業をしておった。 
 そんな折、朝、起きたら、首に違和感を感じた。 左に曲げようとすると痛い。 「もしかして、寝違え?」 と、思ったが、なーんとなく違う。 動き出すと、徐々に痛みは増してゆき、首が左に曲げられないほどの痛みになった。 左側に真っ直ぐプレートが入っておって、痛くて曲げる事が出来んというイメージ。 ヘルニアか? と疑った。 以前、やった事があるから、痛みの広がり方が違う。 ヘルニアの場合は、痛みと、痺れがやってくる。 痺れがないということは、ヘルニアではない。 てぇーとなんだ? あと、身に覚えがあるのは、ランニングくらいだった。 腕の振りの負担が首に来た! どうも、首を捻挫したらしい。 元来持っていた、左方向への捩れが、強引に修正されようとして、捻挫になったのではないか? と、結論付けた。 この痛みを持ったまんま、走ることは出来ん。 衝撃受けるたんび、激痛だもの、こりゃ無理だ。 「これで、駄目なら医者に行けよ」 のバンテリンを買ってきて、塗ってみて、状態を診た。 

 翌日、痛みは残っているが、かなり軽減した。 すげえな、バンテリン! 休日を完全休養で過ごし、練習時間は減っちまったけれど、まぁしゃーない。 無理をせずに25日のレースに向け、再び、調整を開始。 今回のレースの目標は、ダメージ少なく、楽に走り、そこそこタイムを残す事が目標である。