暑いと、色んなことが起きる

 8月に入ってから、猛烈に暑くなり、いつもの湿気ムシムシのインドのような夏になった。相変わらず、マスクは外すことが出来ず、学生は、夏休みが短縮され、この時期、それなりに電車は空いておるのだが、中途半端なに学生が居り、ちょいとばかりうざったい。それでも、サラリーマンは、リモートが多くなったせいか2、3駅我慢すれば座れる。
 作れ作れ、売れ売れ、買え買えムードの世界は、膨張するだけ膨張しておったから、突然の進行をコロナで、妨げられたって感じだ。思いもよらぬ伏兵だな。

 しかし、デジタル機器が安価になったもんだ。Bluetoothの小型スピーカーが3000円ほどで手に入る。小型で、安価であってもデジタルだから、音が良いんだよ。はじめは、Bluetoothで使っていたんだけれど、音が悪い。特に低音が弱い、低音ジャンキーの俺として、一味足りないから、配線で繋げて音を出している。やっぱ、アナログ処理の方が音が良い場合もある。
 デジタルだから、音域が広いから、もしかしてベースアンプの代わりになんじゃね?と思って、繋いで音を出してみたら、やっぱ出る。久々にベースを弾いたよ。ビックリするくらいにへたっぴになっていた。弾いておらんのだからしようがないよな。指がもたつくから、分かっちゃいるけど、リズムは狂う。笑っちまうのが、チューニングが上手いことが出来んときている。以前は、チャチャっと出来たんだけれどなぁ。久々に弾いておると、やっぱ時間が瞬く間に経ってゆく。何回弾いても、上手くゆかん。初心者に戻った感じだ。

 今日は、おふくろの命日である。しかし、29日だと思い込んでしまい、昨日行ってきた。法事は、前後1週間の間にやれば良しとなっておるから、おふくろも負けてくれるだろう。暑い時期に死んじゃったもんだから、毎年、暑い思いをしてゆく。最近は、歳を食ったもんだから、それなりの格好をするようになった。灰色のスラックスに白のYシャツである。以前だったら、どこに行くにも関係なくジーンズに半そでシャツで行ったもんだが、かみさんと一緒になってから、なるべく普通の格好をするように努めておる。それでも,やはり地が出る時がある。

 墓参りに帰りにかみさんの実家により、昼飯を食って帰ろうと駅に向かって歩いておった。一車線相互通行で、端に歩行者道がある田舎によくありがちな道を歩いておった。ふと、対向車線側を見たら、車が通過後、おっさんが倒れた。車から落ちたんかと思った!しゃーねぇーなぁと思い、かみさんと一緒におっさんに近づいていったら、ぶっ倒れちゃってる。「こりゃ、熱中症か?面倒だなぁ、救急車呼ばなきゃなんないじゃん」と思った。「大丈夫?」と声を掛けたら、おっさん意識があり「あぁ酔っぱらっちまった」と来たもんだ。只の酔っぱらいかよ!と思い。とりあえずは、車道からどかして、歩道に入れようと思い手を差し伸べた。「暑いね、50℃ある」とか言い出して、面倒くせぇなぁ。「はいはい、立ち上がって、そこに居ると危ないじゃん、とりあえず、立ち上がって歩道に入ろう」そして、酔っ払いお得意の「大丈夫大丈夫」

 ちょっとイラっときて、「おっさん、そんなこと良いから、早く立ち上がれ」実家で、果物やらもらって荷物で片手埋まっているから、片手でおっさんを持ち上げようと思っているから、結構力を入れている。それにおっさんの言う通り、暑いしな。「とにかくさ、そこに居っと、危ねぇからさ」だんだん、言葉尻が荒くなってくる。全然、動こうとしないから、力任せに歩道側に持っていっちまおうかと思った。そんなことを考え始めたら、身体を歩道側に寄せてくれた。これで、一先ず安心だと思い、かみさんと駅に向け歩き始めた。「酔っ払いは、困ったもんだ」とかみさんに話しかけた。手荒い対応をすることがないから、ちょっとビックリしているようだった。「あの手のことをやるときは、あんな感じになるんだ」と説明した。

 おっさんが小さくなり始めた頃、「ありがとうね!!」という声が聞こえる。俺は、手を振って答えた。暑いと、色んなことが起きる。

 家に着くまで、数100メートルってとこで、タクシーが妙な位置で止まっていた。「変なとこに止っているね」「脇、チャリンコが止まっているから、接触したんじゃねぇの」タクシーの真横に着くと、倒れているばあちゃんと、抱えているじいちゃんが居た。「接触か、タクシーに乗り込もうとして、何か起きたか、どっちかじゃね」「大丈夫かな」「大丈夫だろ」一つ余計なことに関わったから、もう一つは、勘弁だった。タクシーの運ちゃんが居るから、大丈夫だろ。暑いから、色んなことが起きる。

 こーいったことが、冷静に見られるのも、ある意味で、生活が穏やかだからであろう。かみさんや、かみさんの家族に感謝している。そして、俺を俺らしくしてくれた、おふくろと弟に感謝している。