山に行くはずが

 本当は、今日奥武蔵の山を登っている予定だった。 「あちぃなぁ〜〜」 と呟きながら下山している頃だった。 何故に山に居らんのか? ちょっと病院に行っていた。 病院といっても、色々ある。 定番の内科から始まり、耳鼻科、整形外科、眼科と色々ある。 今回、どこに行ったのか? 肛門科である。 恥ずかしながら、ちょいとばかり、ケツの穴の調子がよろしくない。 冬場に切れ痔になって復調はしたのだが、どーにもケツの穴の出口周辺が重いんだなぁ、どうした、俺のケツの穴と思っていたが、誤魔化し過ごしておったが、昨日も調子がよろしくなく 「これって、もしかして別な病気だったらどうしよう」 と不安になった。 

 登る山も決めておって、彼女にも奥武蔵方面に行く事を伝えてあったが、今日、病院に行かんと時間の都合が出来んと思い、昨晩、意を決して肛門科に行くことにした。 肛門科に行って、良い歳したおっさんが尻の穴をさらすのである。 なんかのプレイじゃない限り、身の置き所に困るだろ。 
 彼女にも、伝えるかどうかちょっと迷ったけれど、尻の具合が悪いから病院に行ってくると伝えた。 メールに出してしまうと、行かざるを得ない。 「行く」 と言っておいて、行かないのは、もっとカッコ悪い。 

 そんな訳で、肛門科に行ってきた。 まず、念のため、病院に電話をし、初診でも当日受け付けてくれるかどうかを確認した。 行ったは良いが、受け付けてもらえずというんじゃ困るからな、「大丈夫ですよ」 と返事があり、とりあえず行こう。 

 駅前に肛門科があることは、知っておった。 この同じビルに花粉症の時期にお世話になる耳鼻科も入っておる。 ここは、2時間平気で待つ、それと同じように数時間待つ覚悟で、自動扉をくぐるとお客さん女性が二人。 えぇ女性二人に受付に女性二人? 80%女性じゃん! 肛門科といえば、痔には、ボラギノールの宣伝でもあるようにお父さんの定番であろう。 ちょっと意外と、恥ずかしさが混在しておる。 おはようございますと挨拶をされ、「すいません、初診なんですがというと、お得意の初診フォーマットが出てくる。 問診の手間を省くため、いつ頃から、症状が出ましたか? 薬のアレルギーは? とかが書かれておる。 

 手早く書き込み、受付に渡す、拍子抜けに空いておる。 棚に置いてある筋膜の特集の本を手に取り、パラパラと見ておった。 2人目の女性が呼ばれ、数分すると、出てきた。 早いなぁと思っていたら、「◎×さん」 と呼ばれた。 中年の看護婦さんに呼ばれた。 そーだろう、若い看護婦さんじゃ、お尻を見せにくいからな。 

 中に入り、荷物の置く場所を指定され、「ベッドに横になってください 私のほうにお尻を向けるように」 お医者さんと会話はなく、チャッチャカ進行してゆく。 促されるままにベッドに寝ると 「下着を脱いでください」 おぉもぉー尻を見せるのか!! 心の準備が出来ておらんだろ! タオルを腰のところに置かれ、パンツを脱いで尻を横に出した。 「膝を抱えて、おなかの方へ持っていってください」 

 診察のポーズの完成である。 「はい、触りますね」 先生の第一声! 「口を開いて息を吐いて」 俺 「あーーー」 と声に出しながら息を吐く、声に出す必要ねぇーじゃんと思い、息だけ吐いたら、ブスっと穴に突っ込まれる!! おぉおぉ!! 続いて 「器具を入れますね」 リラックスすりゃ良いものを力むもんだから、穴がすぼまっちゃっているんだな、ググッと器具が入ってくる、力もうが拒もうが先生は手馴れているから、関係なく器具は入ってくるのだ。 

 物の数秒で終了し 「痔ですね」 と簡単にここでは定番の病状が発表された。 「直腸癌の心配もありません」 と淡々と言われる。 えかったえかった、それが一番心配であった。 このところ、肛門の出口周辺が重くてしようがなかった妙な病気が巣食っておったらどーしようと思っていた。 人生半世紀、色んなとこにガタが来ているもんだ。 俺一人だったら、多分何の気兼ねもせず、痔かなぁ、なんか悪い病気なのかなぁと、思いながら日々を送っていただろうが、俺が病気をすっと迷惑をかけてしまう人が出来たから、心配な部分があったら診てもらうべきだと思ったのだ。 

 相手に心配かけちゃいけないと思うと、行動にも影響を与えるもんだ。 調整した登山靴を試すのは、次回に持ち越しだな。