人〜生〜五十〜年〜

 毎年、年明けに地元から巣立ったおっさんに連絡し、集合することがお約束になっている。 おっさん、忙しかったり、それ故に体調を崩したり、3年に一度、召集失敗が起きる。 ずーーっと、召集の連絡を取っているから判るのだが、連絡を取り始めて 「こりゃ、集まりづらいなぁ」 っというのを感じるんだ。 その場合、無理せずに流れに任せることにしておる。 又、面倒だぁっと、いい加減にやったほうが集まりが良いという傾向もある。 不思議だが、頑張れ頑張るほどに集まりが悪くなるという傾向もある。 今年は、集まりが単純に悪い傾向にあった。

 俺は俺で、残業に引っ張られて、時間を調整するのが難しかった。 最終着陸点が昨日の晩ということになった。 天気予報で、南岸低気圧が来て、寒波が降りてきて超寒いと予報が出ていた。 疲れておったし悩むところに友人Hから 「発熱召集不可」 の連絡が入り、より一層迷うところである。 もう1名来る事になったおったが、この流れは、来ない流れなのだ。 錘の分銅が傾くように 「来ない」 と俺に教えておった。 

 場所を指定してきた悪友Kも、セッティングして流すのは、如何ともしたかった。 仕事が終わる直前まで、ガラ携を引っ張り出し、行こうかなぁ〜行くのよそうかなぁ〜っと、やっておった。 そして、冷たい雨を見ながら 「行こう!」 となった訳である。 場所は、ヤツが御用達にしておったステーキハウスで勤めておった親戚が出して、お店だ。 俺は、ステーキに縁遠い。 肉を食わせてもらえる環境におらんかったからな。 おふくろと弟は好きだったな。 だから、ステーキと寿司は、店に入っても注文の仕方がよー判らんのだ。 「焼加減は?」 と、聴かれた 基本の 「ミディアムで」 としか答えようがない。 寿司なんか、もっと判らんからな。 中一になるまで、すし屋に海鮮丼とかっぱ巻き以外のもんがあると知らされておらんかったからな。 

 地元のステーキハウスに20時に待ち合わせである。 Kと二人で会うのは、久しぶりだ。 おふくろが具合が悪くなったときに家に来てくれたとき以来かな。 考えたら、十代のとき、あんだけ頻繁に会っておったのにな、笑っちまう。 

 いやいや寒かった。 俺、寒いの苦手だから、速攻家に帰って鍋でもつつきたい気分だった。 

 地元のOH!Eは、ランニングで頻繁に走っておるから、見てはいる。 見てはいるけれど、歩くスピードで眺めているわけじゃないから、変化を結構見落とす。 そこに何があり、何がなくなったかを気にするまでにならんのだ。 でも歩いているからといってもだ、こんだけ寒いと、歩くことだけに必死だったりする。 おいっちにーさんしーおいっちにーさんしーと歩いてゆく。 数年前、年始召集のとき、ここが親戚が新しく出した店と、指差されたから、何となく場所は覚えておる。 何もないとこに突然、似つかわしい建物が出てくるから印象に残っておった。 

 おいっちにーさんしーおいっちにーさんしーと、気分は雪行である。 看板を見つけたときには、おぉ助かったとさえ思った。 扉を開けると カランコランカランと鈴の音がし、奥から女性が出てきた。 「すいませんKの友人なんですが」 あぁという顔をして 「こちらにどうぞ」 と案内される。 隣に既に盛り上がっているお客さんがおった。 テーブルにK不在! おかしいなぁ既に酔っ払って出来上がっている予定だったのだが。 

 メニューが持ってこられて、まずコーヒーが飲みたい気分なんだけれど、飯を食う前にコーヒーを飲むと、胃に蓋をするような感じになってしまう、イメージなんだけれど、あくまでも食後にコーヒーなのだ。 とりあえず、メールしてみっか。 「先に着いたぞ!」 数分後、「早いな、今、駅に着いたとこ」 と返信がくる。 酒飲みなら、ビール辺りを注文し、ソーセージを食いながら時間を潰すところだが、酒を飲まんとなると、どうしたらよいか判らなかったりする。

 20時丁度くらいに主催者登場!! 2年ぶりか? 気のせいか、ちょっと老けた気がした。 俺も、ヤツも齢50年ちょい手前である、老けるのも当たり前。 髪があるかないか、白いか、太っちまう、しぼんじまう、そんなもんが当てはまる。 半世紀生きちまっているんだからさ、当然だ。 ビックリだよな、俺たちが半世紀生きちまったんだからさ、中学卒業してから、何年だ? まぁいいや、そんなことは。

 「わりぃわりぃ、なんだ、何も頼んでないの?」 いつもの調子である。 出来上がっていないのが予想外かな。 ちょいとばかり老けた印象がある。 俺たちも半世紀生きているのだから、外見も変わってくるわな。 致し方ない。 

 終始、K家の人々の話が多かった。 まぁ親戚の店に行けば、そんな感じなってしまう。 親戚の方もOH!Eの出身で、今でも地元に居るということで、過去現在と詳しい。 ちょっと見んうちに高層マンションの数が増えて、住みづらい街になっちまった。 下品さがなくなったね。 地代が高騰すれば、今まで住んでおったもんも離れてしまい、金持った新参もが闊歩する。 それを目当てに新しい店も出来る。 それでも、競馬場やら、競艇場が近くにあるから、相変わらず下品なとこは、下品だ。 
 
 気になるKの近況であるが、相変わらず緊張感に満ちた生活を送っておる。 それが性に合っていると今も思っている。 親戚人から、しきりに 「いつ、結婚するんだ?」 「前に連れてきた娘は、どうなんだ?」 と色々質問されていた。 途中から、親戚の人同様に俺にも敬語になっておった。 俺もKも、来月には人生半世紀を迎える。 

 「感謝しているよ、みんなのお陰で今ここに居るんだからな」 と、しきりに言っておった。 俺も、おふくろのときは、感謝してもしきれないさ、お互い様という簡単な言葉で、返せないもんがある。 しかし、50年生きてきても、十代の頃の出来事は、手を伸ばせば直ぐそこにように感じるのは、どういうわけだ? 

 帰りしな、「誕生日に50の舞をするからな」 と、冗談で言ったら、何を言っておるかの判らんようだった。 人〜生〜五十〜年〜と扇子もって舞うぞ!! 俺の中では、とりあえず50歳までは現状維持でいようと思っていた。 一区切りだな、みんな60まで元気でいろよ。