今、万感の思いを込めて汽車は走る・・・

 毎年、夏になると観たくなる映画がある。 日に日に暑くなり、入道雲が立ち上がり、着るもんは安っぽいTシャツ1枚になる。 カキ氷にスイカ、素麺、プール、海は好きじゃなかった。 でも、楽しいことばっかだ。 俺にとって、楽しい夏休みってヤツは、中学2年までだった。 夢見る夢男君で居られてた頃だ。 俺自身のことだけを考えていればよかったんだからな。 

 その頃観た映画は、忘れられんもんになっている。 「宇宙戦艦ヤマト」 「さらば、宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」 そして、俺の楽しかった夏休みの最期に観たのが 「銀河鉄道999」 なのだ。 何度観たか判らない、観るたんび、新しい発見がある。 はじめて観たときは、涙なんか、これっぱかしも出なかったのに今じゃ観るたんび、泣きやがる!! 

 今、万感の思いを込めて汽車は走る 「銀河鉄道999」 

 この作品、当たり前だけれど、男の子が、男になるための旅立ちの話である。 リアルタイムで観た時、どーも、ピント来なかった。 うーーん、キャプテン・ハーロックが見たかっだけだよなぁ。 アルカディア号が、映画版で、船首がガイコツになっているんだ。 そして、なぜか、艦首の上で、ハーロックが舵切っちゃっているんですよ! いやぁ、宇宙空間ですよ、ミサイル飛び交っているんですよ、なんといっても、飛んでいるんですよ! 飛ばされれもせずに舵を切っているのだ! でも、カッコいいんだ。 

 ハーロックを語ると、ちょいと長くなりそうなんで、メインを話す。 改めて、観て思ったのが、一神至上主義というのかな、それさえあれば、すべてが手に入るという考え方が鉄郎の中にはあるんだよ。 「機械の身体さえ、手に入ればすべてが手に入る」 と思い込んでいる。 それは、色々なことに共通することだ。 金、地位、学歴、執着、それさえあれば、すべてが手に入ると思えるもの全部にいえることだ。 

 それが、旅に出て、色々な人と関わり、考えが変わってくるのだ。 まずは、トチロウのおふくろ、アンタレス、シャドウ、、トチロウ、機械伯爵、リューズ、プロメシューム、クレア、エメラルダス。 松本零士オールスターズである。 この作品の役目として、判りにくかった松本零士の世界観の整理にも一役かっておる。

 トチロウと、母親のエピソードは、今見ると、涙が出る。 トチロウが 「旅に出るときに別れは、告げている」 というのだが、母親は、そんなこと知ったこっちゃない、おっさんになろうが、じじいになろうが、子供は子供なのである。 
 鉄郎が接する者たちから、男として認められ、助けられながら旅をつづけてゆく。 可愛い子には、旅をさせろを実践させるのは、なかなか難しい。 おふくろはよく、再三に渡り、俺を世界に出させてくれたなぁっと思う。 感謝している。 俺に子供が出来たら、旅に出すことが出来るだろうか? と、考えてしまう。 でも、出さなければならないんだろうなぁ。 

 「人は、限りある命だから、精一杯生きるんだ」 鉄郎が、叫ぶ。 これは、誰でも一緒だし、この世界にあるもの全てだと思う。 草木花、虫に動物に人、そして、惑星、宇宙もそーなのかな、限りあるものなのだ。 

 そして、メーテルは、母親に似ている、似ているということから好意を持ち、そして、異性としてみるのだ。 旅立ち、そして、女と出会い、そして惚れるのだ。 一丁前の男が、どーやって出来上がるかを描いているのである。 

 そして、今、万感の思いを込めて汽車は走る・・・。