Henro walker 5月15日

 我慢して登り続ければ、頂上に着く、終わらん登山はない。 しかし、途中途中で、お地蔵さんが奉ってある。 小さいお地蔵さんだって、石なんだから、重いはずだ。 そこまで、持って来たんだろうなぁ。 おじさん、お地蔵さんがあると、手を合わせる。 俺も、倣って同じように手を合わせる。 なんちゅーんだろう、何年も何年も、ここで、俺たちのような登ってくる人たちを見守ってくれているのだ。 自然と、感謝の気持ちが出てくるもんだ。 そんな思いを色んな人から受けていると、魂が入っちゃうのかもしれないしな。 
 こんな場所でも、お遍路さんの目印は、ちゃーんと付いている。 そいつを見ながら、登ってゆく。 一緒に登っているおじさんは、職場の先輩に山登りの手ほどきを受け、国内の山を色々登っているようです。 だから、山登りのいろはを知っており、無理をせずに着実に登っているのだ。 登山ってヤツは、無理をせずに着実にってことが、大切になってくる。 俺は、なかなかそいつが出来ない。 

 道が泥るんでいるせいか、靴が滑る。 荷物を背負っているから、余計に注意が必要だ。 こんなとこで、こけて、先に進めなくなるなんてごめんだからな。 前日で、一緒だったおじさんが 「登っていて、滑って顔から落ちちゃったんだな、メガネかけていたから血だらけになっちゃって、帰りますと言って、そこから下山していったよ」 そんな話をしていたな。 俺も気をつけんと、そーなっちうからな。 

 2時間ほど歩き、再び、休憩場所に着いた。 朽ち果てた掘っ立て小屋だった。 荷物を肩から抜いたら、汗で、びっちょりだ。 アンモニア臭のするトイレで、小便を済ませる。 あまりにも、滑るので、靴の裏を見たら、ソールの溝に泥んだドロが付いて、ツルンツルンになっておった。 これじゃー滑る訳だ。 水道があったので、ドロを流した。 まぁ、気休めだな。 歩きゃ、叉、ソールに泥が付着する。 やっぱ、トレッキングシューズの方が良かったという訳か。 

 しかし、汚いとこだなぁ、ガイドブックにゃ確か、ちゃんとした休憩所みたいなことが書かれておったなのになぁ。 こんなとこでも、平であるというだけで、嬉しいもんだ。 靴の紐を締めなおし、水分を補給し、再び、歩き始める。 回りこんで、下に降りたら、そこにちゃんとした休憩所があり、そこに先行していたみんなが休憩していた。 「こっちだったのかぁ」 ちょっと落胆するも、掘っ立て小屋で、休憩しちゃったから、「お先に」 と、声をかけ、俺とおじさんは、先へ進む。 ちょっとばかり綺麗な座る場所がある休憩所に後ろ髪を引かれつつも先へ進む。 これで、みんなよりも先行したのか? 疲れていながらも、どこか競争心が残っていたりする。