Henro walker 5月15日

 部屋に戻り、今日起きたこと、出金をノートに記入する。 これは、海外旅行をする時に癖付いたことだ。 この癖付けが、今の俺の生活にも影響を与えている。 パソを扱うようになり、家計簿は細かく、簡単に入力が出来、毎月の傾向が分かる。 そして、日記をプレイバックすれば、何が起きたか分かる寸法だ。 雨に濡れると、困るもんは、全部、ZIPロックに入れ、レインウエアは着ての出発になるかもしれないので、出しておいた。 明日の起きてからの行動を頭で予習し床に入った。 普段も、そーだが、必ず翌日の準備はする。 これも海外旅行で、取得したもんだ。 

 旅館という構造上、やたら音が抜ける。 歩く音が響き、くしゃみが聞こえ、独り言も聞こえる。 まぁしゃーない。 俺は常に耳栓を持ち歩いておるので、うるさいと思ったら、耳栓を使うことにしておる。 耳栓を使っても、緊張のせいか、疲れているはずなのに夜中に目が覚める。 その後、布団の中をごろごろ寝返りをうって、まどろんでいる間に時間になる。 5時を回った辺りで、布団から出た。 まず、窓を開け、雨が降っておるか確認した。 止んでいる。 やった!! 

 浴衣で、食事は、「余裕があるんだね」 と、言われそうなので、飯を食ったら出撃できるように用意万端であった。 6時に朝食を頼んでおいたので、ちょうどに下に降りていった。 「おはようございます」 既に3回目のお遍路に向かうおじさんは、朝食を食べていた。 もう一人のおじさんは、電車バスに切り替えたので、7時の食事にしたのだ。 

 「雨上がってよかったですね」  「考えられる一番良いパターン」 確かに晴れることは考えられなかったから、雨が上がり、曇り、とりあえず持ち堪えるである。 NHKニュースを見ながら、黙々と飯を食っておった。 6時半前には、ここを出て、7時には藤井寺に到着し、山へ進みたいと考えておった。 

 「お接待です おにぎり持って行かれてください」 コンビニで買う、形が決ったおにぎりではなく、ちゃんと握ってくれた温もりを感じられるおにぎりを持たせてもらえる幸せ。 そのおにぎりをありがたく頂き、部屋に戻り、歯を磨き、トイレを済ませ、出発だ。 

 「お世話になりました 行って来ます」 「お気をつけて」 見送られるのは、嬉しい。 

 引き戸を開けると、ひんやりとしておる。 夜明け間もなく、曇りで、隙あらば雨が降りそうだ。 インナーに長袖を着て、アウターにウインドブレイカーを着た。 犬を連れて散歩している人、朝から出勤する人がまばらにおる。 車もそれなりに通っている。 山に向けて、まっすぐ進んでいる。 昨日、来た道を戻っている。 一度、通った道は、しっかりと覚えているから、迷いなくガンガン歩く。 ここまで来ちまえば、あとは山を越えるだけだ。

 片手に杖を持っているが、突かずにリレーのバトンの様に握り、闊歩する。 これで、同行4人と1匹になった。 何とも、やかましい遍路である。 金髪の兄ちゃんがチャリンコを飛ばしてこっちに向かってきている。 俺とすれ違う瞬間! 「おはようございます!」 俺も 「おはようございます」 お遍路の文化は素晴らしい。 

 まずは、藤井寺まで、約5キロを歩く。 宿を出たのが、6時半前だから、1時間以内にクリアしたい。 雨の不安があるから、早めにケリをつけたいというのが本心だ。 ガイドブックなんぞに書かれている所要時間は、5時間だ。 ジャスト・タイムで、クリアして、12時だ。 どこの山でもそーなんだが、所要時間よりも1、2時間早くクリアしている。 当然、ここも1、2時間早くクリアできると思っている。 行程15キロである。 

 藤井寺から近い宿に泊まった人たちは、既に登り始めているのだろうか? 5キロを消化しないで済む分、ちょっと羨ましい! そんなことを思っちゃいけないのに頭をよぎる。 煩悩飛んでけ!!

 ちょっと先にお遍路さんが居った。 焼山寺に向かうのだろう。 「おはようございます」 と、お互い社交の挨拶を交わす。 昨日、トイレを済ませた駐車場で、トイレを済ます。 いつでもどこでも、世界中どこでも、俺はトイレが早い。 マラソンをやるようになって、水分を日に2リッターは消化する。 その分、小便ばっか出る。 結果、飲めないと不安になるから、リュックに500×2の1リッター持っているのだ。 

 山門を抜け、登り口に入る。 よっしゃ、これで、やっとスタート地点に着いた。 時間は7時を回っていた。