Henro walker 5月14日

 田んぼと川と草っぱしかなく、飯を食うとこがない。 昼も回った頃だ。 お遍路は、食えるときに食っておかんと、飯にありつけん。 コンビニも少ない。 店舗があっても、閉めているらしく、シャッターが下りっぱだ。 スーパーっていうか、乾物屋が時々あるが、ジュースや、アイス、インスタント食品が置いてあるだけだ。 あとは、JAだな、農協。 農協は、郵便局よりも多かったよ。 あと、都市銀行は、壊滅的にない。 徳島で、三菱UFJを見たっきりだ。 俺も、郵貯に金を入れ代えて持ってきていた。 

 歩いておったら、JR高徳線の線路に当たった。 エンジニアの彼が、「こっちにゆけば、駅があるはずだ、でも、駅周辺には、店はなかったなぁ」 前日、寺を廻るためにJR高徳線を利用して、周辺の状況はリサーチ済みであった。 地図を広げ確認すると、駅の近くを国道が走っておる。 国道の近くであれば、食うところがあるかもしれんと、我々は読んだ。 
 脇道を歩き、国道192号線に出た! 斜め右手にどさんこラーメン&定食屋を発見!! やった!! 飯にありつける。 

 俺たちは、どさんこラーメンに入った。 いやぁ、珍しいね、東京じゃ見なくなったよ、どさんこラーメン。 入り口の看板になぜか、オムライスの文字。 
 彼は、みそラーメンを頼み、俺は、当然、オムライスを頼んだ。 看板に掲げるくらいだから、一押しであろうし、俺は、オムライスが好きだ。 普段だったら、間違いなくチャーハンを頼むんだが、ここは、オムライスだ。 

 隣の席に地元の人が食い終わって、なごんでおった。 突然、「本当に歩っているの?」 っと、質問された。 「えぇ歩いています」 「そんな大変なこと俺たち、やらないよ」 地元の人たちからは、そういう風に思われているんだな。 「今日、ここら辺だってことは、明日、焼山寺行くの? あそこは、車でも大変だからね」 そーなんですよ、明日は、メインイベントの焼山寺の遍路ころがし。 そんなことを話している間にエンジニアの彼のみそラーメンがやってきた。 話しは、まだ続く 「八十八か所行って、そのあと、和歌山まで行くんでしょ?」 和歌山の意味を知らんかったのだが、八十八か所終了したら、お礼参りし、金剛杖を奉納しに行くらしいのだ、それで、すべて終了になる。 
 遅れて、俺のオムライスがやってきた。 「じゃー気をつけて、歩いてください」 一通り喋り、去って行った。 ケチャップたっぷりのオムライスだった。 卵はふわふわで、良かったのだが、なぜか具が何も入っておら〜んケチャップライスであった。 でも、美味しかった。 ここから藤井寺までは5キロほどだ。 さて、どうするか?

 一緒に軽い話しをし、重い話しをし、くだらない話しをしておると、とりあえず、一緒おる時間を作りたくなってくる。 特にこーいう特殊な旅は、そーなのかもしれん。 結果、藤井寺に寄り、鴨島に行くことにした。 
 斜めに斜めに進んでゆく、遍路マークを頼りに進んでゆく。 国道から離れ、閑散としてくる。 遍路道は、こーでなくっちゃいけない。 背中の荷物は、俺に吸い付き離れない。 ちょっとした荷物の一体感だ。 お互い、疲れがあるのか、見えている状況に対してのみ、反応する。 どういうことかって? 「閑散としてきた」 とか 「道が狭い」 とか、そんな会話をし始める。 とりあえずは、藤井寺に着くことだ。 

 「藤井寺」 と書かれた案内板が出てから、結構歩かされておる。 蛇行する狭い道を進み、個人の庭みたいなとこも抜けた。 遍路道をゆくと、人様の庭だったりする。 住んでおる方が、お茶飲んでおったりして、「こんにちは」 とあいさつを交わしたり、会釈したり。 東京だったら、「何やってるの!」 と追い返されるか、不審者として、通報される。 1200年間続いた文化なのだろう、凄いよな。  

 蛇行する道を抜け、やっと、山門が見えた。 11番藤井寺に到着。