Henro walker 5月13日

 長い道中、ポイントポイントにお遍路さんの休憩所がある。 場所によっては、お茶が置いてあったり、お菓子が置いてあったりする。 当初の予定では、1時間歩いたら、10分休憩しようと思っておったが、そんなことは、お構いなしに飯時と、水分補給以外は、休憩らしい休憩を取らずに歩き続けていた。 初日だという気負いもあるのかな、まだ、歩いちゃいないから、疲れは、感じておらんかった。 

 休憩所に先程の登山ルックで、歩いておった夫婦が居った。 「どうしたんですか?」 「どこで、引き返そうか考えているんです」 「引き返すんですか?」 「徳島に旅行に来ていて、お遍路を歩いてみようと思って、歩いていたんです」 なるほど、だから、登山ルックで、歩いていて、遍路道を知らんかった訳だ。 バス停を探しているようなのだ。 俺も、唯一持っているガイドブックを取り出し、探してみる。 6番目の安楽寺の近くにあるようだ。
 「そのリュック、楽ですか?」 俺のリュックを指差し聞かれる。 背負っている俺は、判らんが、背中に隙間が出来ているのが、気になるようだ。 「直接、当たらないから楽です」 「それ、私も欲しかったんですけど、買ってくれないんですよ」 と、笑顔で言っていた。 今日は、とりあえず、徳島に戻り、明日、焼山寺の山を登るつもりだと言っていた。 焼山寺は、3日目に越える事になっておる寺である。 山の頂上に寺がある。 お遍路の一つ目の難所といわれている。 当然、見たことないもんは、ビビるのである。 

 ここまで来れば、あと僅か、ご夫婦に別れを告げ、安楽寺に向かう。 

 午後になり、日差しも強くなっていたが、あまり暑さは感じなかった。 俺の前を一生懸命歩いている途中で出会った女性が歩いていた。 「こんにちは、一人なんですか? 女性で珍しいですね」 暑さで、顔を赤くしながら 「3番目までは、一緒の人が、そこから一人なんです」 ?と思ったが、話を聞くと、歩き始め心配だから、3番目まで、着いて来た人が居ったらしい、助走を一緒に歩き、そこから先は、一人というわけだ。 歩けるのかなぁ? と、心配をよそに彼女は自分の行程をしっかり、歩くんだけれどね。 

 さて、ここら辺に来ると、一泊目の宿のことを考える。 俺は、事前に予約を入れておった。 当初は、予約を入れんと、素泊まりで行こうと思ったが、それだと飯が付いてこん!! 近くのコンビニで買って食えばいいやと思っておったが、大きな間違いで、周辺にコンビニも、食事をするところも、なーんもない。 非常食として、入れておったカロリーメイトを食うことになるところだった。 
 出発する1週間前に 「ちゃんと、予約しておいた方がいいんじゃね?」 と、ふと、思ったのだ。 一泊目は、7番目の十楽寺の宿坊に宿をとっておった。 宿坊というのは、参拝者や、寺を訪れた人のための宿泊施設である。 6番目の安楽寺に取ろうと思ったのだが、どうせ、7番目に行くんだから、そこでいいかなっと思った。 

 安楽寺に着き、本堂の隣に古めかしい家屋があり、「宿坊」 と書かれておった。 失敗したなぁ、こっちのほうが良かったなぁ。 どうせ、泊まるんだったら、こーいった趣のある宿に泊まりたいと思っていた。 最近は、ネットで、大概のことはUPされておって、事前に宿のことも調べておって、十楽寺の宿坊は、まるでビジネスホテル並で、食事も評判がよくなかった。 食事に関しちゃ、食えりゃいい派だったから、別にかまわないじゃんと思っておった。 俺の食生活は、NYに居ったとき壊れた。 ファーストフード派になった訳じゃなく、合成物質、香辛料ガンガンの食いもんに飽き、サラダや、バターを塗ったベーグル、中華料理のみを後半は、食っておった。 それ以降、食いもんは薄味になった。 

 そこから、7番十楽寺までは、1キロ強、あっという間だ。 15時くらいに到着した。 20キロ弱の行程を6時間で歩いた。 昼食の時間があったとしても思っていたよりも時間が掛かってしまった。 まぁ、こんなもんだろう。 山門がビックリした。 なんつぅんだろう、竜宮城? そんな感じだ。 隣に近代的な建てもんがある。 宿坊の気がする。 うーーん、噂どおりだ。 竜宮城に一礼して中に入る。 中は、猫の額ほどであるが、歴史を感じる本堂がある、しかし、山門の竜宮城は頂けない。 

 俺が中に入ったと、同時に観光バスから降りた団体さんが、攻め込んできた。 40名位が一気に階段をかけ上り、こっちにやってくる。 もぉー手遅れ。 ろうそくに火を灯そうと思っても、ロウソク台の周りをだな、じいちゃん、ばあちゃん、おじちゃん、おばちゃんが取り囲む。 にっちもさっちもブルドックなのだ。 
 手早く線香に火をつけ、賽銭を入れ、力一杯お祈りし、階段を下りる。 読経の大合唱が始まった。 俺は、人の居らんところで、リュックから水を出し眺めておった。 いやいや凄い凄い、GWあたりは、ずーーっと、こんな感じなのかねぇ? 読経が終わると、白い絨毯はバスに吸い込まれてゆくのであった・・・めでたし。

 俺は、宿坊と書かれた国民宿舎みたいなところにチェックインに向かった。 入館じゃなく、チェックインだ。 「すいません、今晩泊まることになっているものですが」 「はい、ここに名前と、住所記入してください」 忙しなく、店舗の受付をしながら、俺の対応をしている。 おいおい、ここって、宿坊? それとも観光地にあるビジネスホテル? 「すいません、先払いで、7700円です」 今回泊まった中で、一番高い宿がここ。 「じゃー3階です、こちらが鍵です」 と渡されたのがカードキー・・・もしもし、宿坊ですよね? 

 308号室、中に入ったら、ツインルームでしたよ。 風呂に入ったら、すんげー腕が痛くて、もしかして、焼けた? 風呂上りに腕を見たら、しっかりばっちり、焼けてボーダーが付いてましたよ。