Henro walker 5月13日

 大日寺に山門の前で、先ほどの登山ルックをしたご夫婦に会う。 今度は、そちらが先行した。 「こんにちは、うどん食って、昼食にしてました」 「あぁ、あそこで食べたんですか」 やはり、俺の後ろを追っかけてきていた。 「次にゆくには、ここを下ればいいんですか?」 叉、聞かれた。 

 よし、大日寺をクリアして、半分折り返した。 おいおいまるで、オリエンテーリングじゃないか! 道は、フラットだから、問題なく歩くことが出来る。 とにかく、こいつに慣れることだな。 日差しは強いんだが、風があるから、それほど暑くは感じない。 この時期、まだ、鼻がむず痒い、あれだあれ、アレルギー性鼻炎。 それも心配の一つだった。 薬飲みゃーいいじゃんと思うだろ? 鼻炎の薬って、物凄く喉が渇くんだ。 ずーーっと、歩いておって、喉が渇くのは致命的だ。 当然だが、ランニングのときも飲まない。 気合で、止めるしかないな。 

 大日寺を後にして、坂を下ってゆくと、電車で一緒だった白装束の彼が、座り込み飯を食っておった。 しきりにスマホを操りながら飯食っている姿がなぜか、滑稽に映った。 このご時世、それが普通なんだろうけれどな。 俺は、国道から外れ、遍路道の案内に従い歩いておる。 国道から外れた時点で、俺のガイドブックは役に立たん。 ガードレール、交通標識、電柱などにお遍路道の案内が出ておる。 曲がり角に着くたんび、それを探す。 マジ、それ頼りである。 
 太陽が照りつけはじめ、暑さも加速する。 「紫外線は、夏ではなく、今の時期が一番強いんです」 と、散々テレビで言われておるけれど、あんま気にかけなかった。 ここ数年、焼けることがなかったからであろう。 半袖で、腕をぶんぶんぶん回して、歩いておった。 しっかりちゃっかり、焼けるのだ。 この時点では、そんなことは知る由もなく、歩くことにばっか気がいっておるんだ。 

 地蔵寺まで5キロ、これをクリアすれば、今日は、終わったも同然である。 毎日、歩き続ける何ちゅーことは、やりそうでやらない。 サラリーマンも営業で、歩き続けるが、歩くことだけを目的に歩く訳じゃーない。 人は、どこかに向かうために歩くのかな。 だとしたら、このお遍路の 「歩く」 の目的は、一体なんだろう? 俺の中には、5日間の行程の中で、俺が立てた目的を達成するために歩いているのかもしれない。 これで、正しいのだろうか? 

 矢印に従い辿り着くと、寺の山門からじゃなく、脇っちょから入ったようだ。 これ遍路道なのか? 中に入ってゆく。 名前が確かめられんと、判らんなぁ。 本堂らしきものに向かっていたら、声をかけられた。 「そこに入るんだったら、拝観料を払ってください」 うん? おかしいなぁ、お遍路で、拝観料が必要なとこなんて、聞いたこたぁない。 判らん場合、素直に聞く。 「すいません、こーいったことに詳しくなくって、判らないんですが」 しゃーないなぁという顔をされ、説明してくれた。 地蔵寺の中にもう一つ、五百羅漢堂があり、中にある等身大の羅漢を見るために拝観料が必要なのだ。 宗教心も、羅漢像に対する興味もないから、スルーした。 進みながら、知識を得ていった。 八十八箇所とは別に霊場があるんだ。 これも、お参りするというオプションもあり、これを入れると、100を超えることになる。 周辺に八十八か所に該当しないお寺や、神社が多いんだ。 結局、宗派が違うから、仲間に入れんかったのだろうな。 そして、四国という場所柄、自然災害の多さから、神仏に頼る文化があったんじゃないのかぁっと思う。 
 
 とりあえず、正面から入りなおそうと思い、山門で、写真を撮り、挨拶し、入りなおした。 これで、残り、二つである。 後は、只管闊歩するだけである。