Henro walker 5月13日

 旅に出ると、頭が高速回転する。 海外でも日本でも変わらんようだ。 昨晩、睨めっこしておったガイドブックの地図が頭に入っておる。 目を瞑ると地図が・・・って、訳じゃなく、目を見開いておっても頭に浮かんでくる。 普段、全然回らないが、こーうときは、しっかりと回るから、俺って好き。 駅を出て、左へ左へ行きゃーいい。 

 店らしい店はない。 俺のイメージは、1番霊山寺に向かう通りにずらーーっと商店が並んでおり、「お遍路さんですか? 白衣とかお求めじゃないですか? どうぞ、見てってください」 と、海の家状態なんじゃないか? と、思っていたりしたから、拍子抜け。 閑散としており、いつものようにトイレを済ませてから、駅を出たので、一途最期に俺が陣取った形になる。 白装束、老夫婦の後ろをテクテクとついて行く。 
 まず、店舗に入り、お遍路グッズを購入することを考えておった。 はじめはさ、普通の恰好で、こっそり、お遍路していますってな感じを考えておったんだけれど、どーせやるんだったら、お遍路やってます位までは、整えようと思った次第です。 

 駅から10分ほど歩き、右に曲がると、寺が見えてきた。 何気に何をどうしたよいか、分からなかったりするんだ。 宗教の礼作法がさっぱり分からんからな、出来る事といったら、誠心誠意祈ぉーーる! 一応は、やり方は書いてある。 
 先ほどの準備万端のお遍路さんは、そのまんま中に入ってゆく。 老夫婦の観光者も中に入ってゆく。 俺はっちゅーと、やっと出くわしたお遍路グッズのお店を見付け、そこに入っておった。 お客さんが居って、笠を物色しておった。 まずは、白衣かと思いかけてあるもんを見る。 背中に大きく南無妙法蓮華経と書かれておる。 如何せん信心深くないから、ちょっと恥ずかしい。 この恥ずかしいは、意味も分からず、着ていることが恥ずかしいってことね。 「すいません、これの何も書いていないヤツは無いですか?」 「袖なし、袖あり、あぁ袖なしの方が良いわね」 「あ、はい」 この袖なしが、このあとミステイクになるのだ。 袖ありにしようかなぁっと思いながらも、暑くなるから袖なしで良いやと、処理されてしまった。 袖なしでミスし、南無妙法蓮華経は、信心深さの問題ではなく、道中の無事を祈るためである。 なーんも書いておらんかったら、厄が総攻撃かけてくる!! そして、笠である。 これには、ちゃーんと、南無妙法蓮華経と書かれておった。 この笠が被るのがちょいと面倒で、最期まで、被るのに時間が掛かった。 皆さん、色々と工夫をして、やっておられるようだ。 一本で止めるタイプもあるが、それだと、風に吹かれると飛んでっちまうんだ。 俺の場合は、店の人が紐を3セットくれて、耳のところに輪が出来るように1本ずつ付けて、そこを通すようにもう一本で、アゴのところで縛るのである。 これで、風が吹いてもある程度までは大丈夫である。 
 信心深くなくても線香と蝋燭は分かるよな。 「これで、一通り、揃いましたかね」 「あとは、朱印をもらう納経帳ですかねぇ」 「これ、もうちょっと小さいヤツないですかねぇ」 「これが一番小さいです」 持って来たウエストバッグに入らんかった。 お遍路グッズを入れるために山谷袋があるんだけれど、その場合、このウエストバッグをリュックに入れなければならんだが、そんな余裕はない! 「入らないんで、いいです」 無宗教バンザイ! あと、納め札を買わなくっちゃ、表に住所、氏名を書き、裏に願い事を書くのだ。 名刺みたいなもんだ、こちらにお邪魔しましたというご挨拶。 そうそう、笠が直接当たると、痛いから、手ぬぐいを使うんだったな。 これで、一通り、揃った。

 寺の山門で、合掌一礼する。 そして中に入り、水屋で、手を洗い、口をすすぐ。 やっぱ、日本人なんだなぁっと、思うのは、やりなさいよと、書かれておると、そのとおりにやってしまうのだ。 冠婚葬祭は、特にそうだよなぁ、これで、大丈夫? と、おふくろの再三聞いたもんだ。 根底に恥ずかしいという感情があるのだろうが、偉い人に言わせると、大切なことは、形ではなく、心である。 如何せん、一般人は、この心が怪しいと思っているから、せめて形だけでもと思うのかもしれない。 

 とにかく、ぎこちなく順番にこなしてゆく。 納札し、それから、蝋燭に火を灯し、線香を3本立て、賽銭を入れ、読経するのだが、先に蝋燭を立て、線香を上げ、納札し、賽銭を入れ、祈っておった。 読経も、長いんだ。 長いから割愛した部分もある。 当然、暗記なんか出来んから、読みながらじゃないと、唱えられない。 そして、俺は買わんかったけれど、納経所で、納経帳に朱印をもらうのだ。 

 最期に山門で、再び、一礼して、出てゆくのだ。 スタートの霊山寺である。 写メを撮って、送ろうと思い、写真を撮っておった人に頼み、山門のところで、撮ってもらった。 それが、皆さんに送った一途はじめのメールです。 よーく見ると、とにかく着こなしがぎこちない。 着いたばっかのぴかぴかの一年生。