日活の匂いがする

 俺は、相変わらず、藤竜也のファンである。 未だにカッコイイと思っている。 70を越えているのにあの肉体と、ジーンズをさらっと履きこなしてしまうことも憧れである。 日本の役者の中で、肉体改造の奔りである。 仮面ライダーではない。 俺も、出来ることなら、60を越えても、サラッと、ジーンズを履きこなしたいと思っている。 こればっかりは、なってみないとわからん。

 これ、日本では珍しいハードボイルドである。 原作が、北方謙三で、なーんとなく日本のハードボイルド界の牽引者的な扱いになっておるけれど、そんなでもないと思う。 それに日本じゃ、ハードボイルドが育たん土壌である。 金田一耕助は、育ったんだけれどねぇ。 バブルの時、なんちゃってハードボイルドが発生したんではないか? 確かに日本で、バーボンは、市民権を得たけれど、それが似合う人って、少ないと思う。 飲むことは、誰にだって出来るし、飲んだくれでも出来る。 だが、その酒が似合うとなると難しい。 それは、藤竜也であっても、難しいと思う。 寡黙な、今のガキどもには、到底ない雰囲気なのだ。 ある意味で、日活映画の匂いなのかなぁ。

 そんな、日活の匂いがする 「友よ静かに瞑れ」 

 これも、好きでねぇ、何度も観たのよ。 人にお勧めできる映画ではない。 好きな人だけ、観れば良いという映画。 主演が、藤竜也原田芳雄倍賞美津子林隆三、室田日出夫、佐藤慶 列挙しただけで凄い面子だろ? 今となっちゃ、50%死んじゃっているもんなぁ。 これ、原作と若干、色合いが違う。 本の方が、臭ってくるほど臭い。 その臭さを緩和するように本が書き換えられている。 無国籍感を出すために沖縄でロケをやっておる。 これが、良い雰囲気を出しておるんだ。 日本で、ハードボイルド作ると、途中まで、ギャクで逃げて、後半、締めるって感じだろ? これは、はじめっから、ずーーっと、そこそこ締めておる。 ラストになってやっと、林隆三が出てくるんだ。 配役としちゃ、なかなか適材適所だと思っておるんだけれど、これも、感じ方だな。 いつものバタ臭い芳雄っちゃんと、寡黙な藤竜也の共演だ。 腐るほどの日活アクション映画を潜り抜けた二人の気合の入った殴り合いも、見所だな。 

 これ、映画館に観に行ったんだけれど、角川映画で、角川も後半は、1本で勝負できなくなっておって、2本立て上映が多かった。 これも、そーだったんだけれど、同時上映がさ、「結婚案内ミステリー」 だったっけかな? アイドルもんとのカップリングだった。 トトロと、蛍の墓の同時上映に負けておらんな。 ジブリも、何を考えて、そーなったんだろうか? 片やほのぼの、片や号泣トラウマだろ? よー分からん。 グリコの一粒で、二度美味しいを真似てみたのかねぇ? 2本立てを始めた辺りで、角川も衰退していって、春樹も薬やっちゃうんだなぁ。 

 日本映画不遇の時期に出来上がった、エアポケットのようなマニアックな作品だと思う。