大人の遠足 その5

 今まで見た城は、数える位しかない。 それも、興味がなかったから、どこの城を見たかさえ、憶えておらん始末だ。 一つは、おやじの実家の福島に行った折に見ているんだが、小学生だったから、なーんとなく城を見たという記憶でしかないから、もしかしたら、見ておらんかもしれんし、いい加減。 もう一つは、知り合いの長野の牧場に行ったときに案内してもらった城。 これ叉、どこだか覚えておらーん。 見よーという気持ちがないと、まるっきり、印象に残らんのだね、困ったもんだ。 

 どちらも、城らしい城だった気がする。 歴史的な建造物ってさ、そこに居ると、想像力をかきたてるじゃない? モンサンミッシェルに行ったとき、今のように電気なんぞ発達しておらんから、暗くて、細い、螺旋階段を蝋燭の明かりで、登って行ったんだろうねぇ。 そんな狭いとこで、中世の騎士が剣をぶん回したりして、闘っておったかもしれんと思うと、あぁこんな平和な時代で良かったなぁとか思うのだ。 

 マイホームのことを城と呼ぶ、考えてみっと凄いよな、今でこそ、日本何ちゅー国に収まって、南から、北まで、前へ習えで規則正しくなっておるが、戦国時代は、隙あらば、隣国の当主を殺してだな、自分の領土にしちまったんだからなぁ。 明治維新直前まで、そんな感じだ。 ある意味じゃ、昔の方が、チャンスはあったんだろう。 今みたく、形作られちまって、にっちもさっちもゆかなくなっちまっているけれど、電気は通って、夜でも本が読めるし、テレビも見れる、パソコンだってある。 歩いて、移動する何ちゅーのは、健康を考えている連中だけだ、車に電車だ。 大金払って、勉強を教えてもらわんでも、義務教育でリーズナブルな金額で、教えてくるんだぜ、まったくもって、良い国だ。 それを考えると、東南アジアや、政情不安定な国の人たちが羨ましがるのは理解できるだろ? ないもの強請りなんだよ、こんだけ、しっかり好きなことが出来るにも関わらず、「自由がない」 なんて言う! 

 城壁っていうのかな、それは、しっかり残っており、それが大阪城を囲んでおる。 皇居みたいな感じだな、あそこだって、元々は、江戸城址だろ。 一説によれば、江戸城がそのまま残っていたら、日本は世界一の観光国になっていたとか書いてあったな。 もし、残っておったとしてもさ、皇族が住んでおっちゃ駄目だろ。 現在進行形で、皇族に使われておるから、皇居の中の配置、構造は分からんよな。 分かるんだったら、知りたいよな、興味はあるんだけれど、情報の収集が出来ん。 

 城壁は、うねうねしながら城に案内する。 実際は、もっと、うねうねしておったんじゃないのか? だって、攻め込まれたときにそのうねうねが大事なんでしょ? 周りは、あれだ、韓国、東南アジア、中国のASEAN連合軍だ。 ちょっとケバイのは、間違いなく韓国、あと、中国は、髪型と、恰好で分かる。 同じもん着てても何故に分かるのかねぇ? そうそう、あとは、標準語喋る人たち。 
 自販機で、600円の入場券を買って中に入る。 最近は、観光地でも当たり前のように自販機だなぁ、窓口のおばさんから、真っ直ぐに切られていないチケットをもらうほうがなーんとなく嬉しい。 中に入ったら、なーんのこたぁない雑居ビルの中みたいだった。 再建したというと、忠実に再建したと、考えてしまう。 どっか一部くらい、そんなところが残っているんだろうと思い、シンガポールからの観光客と思しき連中と、エレベーターに乗り込む。 いやいやいや、城にエレベーターか、秀吉もビックリだぜ。