ボーーっとする方法

 早いもんで、弟が死んで、17回忌になる。 過ぎ去ってみると早いなと感じるが、その瞬間は、そんなことは考えもしないんだけれどね。 一人で、行くのも寂しかったので、彼女に付き合ってもらい墓参りに行った。 

 弟に語りかけるときの枕詞は、「バカやろう」 である。 墓に刻まれている享年27歳という文字がいつも痛く感じる。 彼女が出来て、止まっていた時間が再び、動き出したような気がする。 自暴自棄で、生きておったわけじゃないけれど、天涯孤独と思っているところがあったから、気に掛けずに生きているところがあった。 そーいう部分は、徐々に変化している。 
 
 彼女から、家族の話を聞くと、「あぁそーいえば、こんなだったな」 と思い出すようになった。 一人で居るとさ、答えが出ていると勘違いしてしまうところがあるのだ。 自分じゃ気づいちゃいないけれど、何かが止まっているんだ。 

 今でも、弟が死んだ前日の晩を鮮明に思い出す。 人は、歳を食うごとに忘れる技術を会得してゆくらしい。 俺の場合は、考えることを特化させて生きてきたようだ。 破綻しない考え方を会得したのかな。 突き詰めると世界は崩壊する、突き詰めずに無理なことは諦める。 

 彼女から、「考えないで、ボーーっとする方法を知らないんでしょ? それを知らなきゃ、考えることと、考えないこととどちらが良いか分からないよ」 と言われた。 確かにその通りだ。 如何せん、考えないという術を知らんからな、さて、どうしたものか? これからの俺の題目かな。