Henro walker 5月15日

 お遍路マークを探しながら歩く。 地図持ってんだから、大丈夫だろ? って、思うだろ? 寺を出て、T字路になっておると、どっちゃ行ったら良いか、判らなくなるんだよ。 T字路で、尚且つ、複数道が走っておったりすると、直感に頼ることになる。 一人の場合は、直感一本槍なんだけれど、数人おると、中途半端にお互いを頼ったりする。 「こっちじゃね?」 先に言葉を開いたもんに従う。 

 下山し始めて、10分ほど歩くと、反対側からお遍路らしき人がやってきた。 あんりゃ、変じゃね? 「すいません、焼山寺に向かっているんですか?」 「いいえ、下山してます」 ふと、後ろを振り返ると、お遍路さんが叉、一人。 「どちらに向かっているんですか?」 「あなた方の後ろを着いてきたんです」 もしかして、俺たち方向間違ってね? 

 回れ右して、来た道を辿った。 戻ると更にこっちに向かっておった人と出会う。 みんな、回れ右して、合流し、分岐点まで、戻ってきた。 ふと見ると、渡った対岸の道にお遍路マークが付いておる。 ここで間違ったんか! 遍路協会の人がマーク付けているもんだからさ、公的じゃないので、奥ゆかしい所に貼ってあるのだ。 だから、見逃してしまうのだ。 
 「おぉ、こっちだこっち」 みんなで、対岸にある下りの道に向かってゆく。 一人で、トボトボ歩っておって、道を間違えると、不安になるが、何人かで居ると、不思議とそれを楽しいを感じるようになるから、不思議だ。 

 人数は、6人になっておった。 個人のお遍路がこれだけ、揃うのも珍しいのではないか? さらに下山すると、そこに又、二人居った。 先行で出発しておったメガネをかけた女性と、ポンチョの男性がいつの間に選考しておった。 合計8人である。 「こりゃ、ちょっとしたキャラバンだ」 お坊さんが言った。 「記念写真撮ろう」 ってことになり、撮り手が抜けることになるんで、7人ぞろいのキャラバン写真の出来上がりである。 ちょっとしたもんだ。 

 俺を含めた4人は、一緒の宿に泊まる。 他の4人は各人別の宿に向かうのである。 地図で、俺たちが泊まる宿の位置は、大まかに判っちゃいるけれど、現地に行くと、ちょいとばかり様子が違うんだな。  

 下山して、店があって、バス停があって、その先にあるという感じである。 うねうねって道が書いてあって、バス停マークがあって、うねってして、宿がある。 シンプルだ。 手前の店が、宿を兼務しておって、そこに泊まる人が居って、そこで一人さよなら。 我々は、先へ進む。 離れがたいのか、みんな一緒に進んでゆく。 バス停があり、先がうねってしている、確かに地図の通りである。 右手に入り、見上げると、今晩泊まる 「なべいわ荘」 の文字が見える。 「おぉ、ここだここだ」 我々4人が泊まる宿は見つかった。 1名は、俺らと同じ宿で、5名、残り2名は、違う宿である。 一人は、さらに下に向かう、うねうね道を行き、ちょっとブルジョアな、温泉宿に泊まる事にしたらしい。 そして、もう一人は、山越えをしなければならないのだが、俺たちについて来てしまい途中の分岐を見逃してしまった。 来た道を戻り、数キロ登らなければならない。 ここで、別れる人は、お坊さんに住所を渡し、後日、キャラバン写真が送付される予定。 

 俺たちは、いそいそと、なべいわ荘に入ってゆく。 「すいませ〜ん」 「は〜い」 と、おかみさんらしき人がお出迎え。 きつかった焼山寺も、終わっちまえば、只只爽快だったりする。 今は、風呂に入って、飯を食いてぇーと思うだけである。