頭の中は、整理され、刈り込まれているのがよろし

 職場に俺の歳の半分のヤツが居る。俺の職場って、比較的年齢層が低いんだ。そんな中で俺は、しっかりと、上位ランキングしている。そんな俺の半分のヤツから、「どんな本を読んでいるんですか?」と言われ、又、「お勧めの本はありますか?」と聞かれた。俺にそんなことを聞いて来るヤツなんて、なかなかのつわものだ。

 さて、どこら辺から語ってやればいいか。そもそも俺んちは、誰も本を読むヤツが居らんかった。読書家になるには、家族に読書家が居るもんだ。その影響をまともに受けて読むようになる。手の届くところに本があり、気軽に本に親しむ関係がなければ読書家にはならん。

 俺は、何故に本を読むようになったか? 十代の頃、暇で金がなかったからだ。やることがなく、金がないから、本でも読んでみるべぇとなった訳だ。おふくろも本を読んでいる分には、何も言わんかったしな。はじめは手近にある本から手を出した。親父がまだ、家に居るころに買ってもらった星新一の「気まぐれロボット」から読み始めた。読められることなく、ずーーっと放置されておった本が、やっと活躍の場を得た訳だ。
 
 それから、目に付く本を片っ端から読み始めたのかな。簡単なとこで、映画の原作本から手を出した。色々読んだが、2回の引越しで殆ど捨てたり、売っぱらった。そして、精神分析学と心理学に興味を持ち読み始める。あれだあれ、フロイト。十代の頃に何故かフロイトに行き着くんだ。ネットなんかない時代にどーやって行き着いたのか覚えておらん。雑誌か、読んだ本の解説に載っておったのかもしれない。自分自身の精神構造を理解するために読み始める。うちの家系には、精神疾患の気があり、俺自身もその気があったから、そいつを治そうとしたんだなぁ。色々本を読み漁ったけれど、最終的には、自分自身で解決の糸口を見つけるしか術がないということに気づく。ここら辺で、精神分析、心理学に見切りをつけた。何故かって? 特定の形にしか、効力がないから。

 それから、文学の方に今更ながら傾いてゆく。本を読み続けておると、読む力が付いてくる、読む力が付いてくると、それなりのレベルのもんを読めるようになってくる。精神分析学、心理学もそうだが専門用語があり、それを分かっておらんと、理解が出来んのだ。これは、どんな分野においても一緒で、それなりの知識が備わってこないと理解することが出来ん。当たり前だな。

 基本、俺は、人に聞くことをせんから、本から何かを得ることが多かった。だから、悩み事があると、闇雲に本を読み続ける。そして、読んだ本の中から解決策を見出してゆく。今は、そんなことをせんでも頭の中で、解決策を見出すことが出来る。半世紀も生きてくれば、それくらいのことは出来るようになる。

 この解決策を導く出す能力を身につけたため、哲学に手を出すようになる。色々な本を読んだが、哲学にだけは手を出していなかったんだ。哲学のイメージが嫌いだったんだろう。眉間に皺を寄せて考え込んでいる姿がよろしくない。だが、俺が暗中模索でやろうとしていたことが哲学だったということに読んでみて気がつくことになる。そして、哲学ばっか読むようになる。そんな本ばっか読んでおったから、おふくろは、俺がおかしくなるんじゃないかと思っておったらしい。諸刃の剣ではあるな。

 俺は、相変わらず、読むの速くはない。速読に挑戦したが上手くゆかんかった。普通の人よりは速いけれど、速読ではない。だから、あるとき、これから先、どれくらい本を読めるのだろうか?と考えた。これだけ世に本が出ておる。その本を死ぬまでに全部読むことなんか出来はしない。これからも興味をそそられる本は出版される。ジャンルを決めて読むべきだと思った。結果、ノンフィクションだけに絞ることにした。

 ノンフィクションといっても、事件や犯罪物という訳ではない。俺の中では、哲学書もそれに入るし、歴史書もそうだし、思想も、経済もそうだ。逆に読まんのは、ゲーノー人本とか、流行本とか、ミステリーもんとかかなぁ。流行本は面白いけれど、後に何も残らない。小難しい本ばっか読んでおって、切り替えるために肩のこらない本は読むな。

 お勧めの本か、定期的に読み直す本にデカルトの「方法序説」がある。哲学の基本の書だな。確か、哲学の本は、これから入っていった気がする。そして、俺の好きな哲学者はバートランド ラッセルだ。この人の本も、読み直す。この人の「幸福論」は、生きるべき指針を見つけるに役に立つ。若いうちに煮えきらず、カオス化している頭の中をカンブリア紀に導くことが出来る。

 カオス化し、発想が際限なく出てきはするけれど、具体化せず、どーしようもないときに本は必要なんだと思う。交わることがないはずの先人の知恵を学ぶことが出来る。本は、そーいうもんだ。ネットで抜粋だけを読み、分かった気になるのは、危険だっちゅーことだ。それほど高いもんでもないから買ってみるのも悪くないよ、とか言ったのかな。

 デカルトなんか出てきちゃったから、「方法序説」でも読み直すかな。頭の中は、刈り込まれ、整理されておるのがよろし。