ガンダムもどき

 ガンダムとの付き合いは、俺が中坊の時からである。 おっさんだっちゅーのに未だ付き合いがある。 関連グッズで、くだらないと思っても! 売っておると、ついつい目が行ってしまうのだ。 どこぞのメーカーのシャア仕様の車には呆れたが、走っておるとやっぱ、見るのである。 
 当然であるが、ファーストガンダムである。 生まれてはじめて、ガンダムを見たときの鮮烈さは、忘れることが出来ん。 第1話で、「弾がない!」 というのには、痺れた。 俺たちの世代は、果てしなく腹からミサイルが出てくるマジンガーZや、やられてやられても復元する宇宙戦艦ヤマトを見て育ったのだから。

 オタクアニメ創世記、宇宙戦艦ヤマト銀河鉄道999、それぞれに思い入れがあるが! 現在進行形で、新作が作られておるのは、宇宙戦艦ヤマトと、ガンダムだ。 ガンダムに関しては、広がった裾野が平原のようになっておって、末端に関しちゃ、よー見えん。 

 それでも、世代を超えた不変のキャラは、シャアであり、アムロだ。 この相対するキャラは、ペイジ、クラプトン! キャンディーズピンクレディー! ビートルズストーンズ? と上げていったら限がないが、それとまったく変わらん。 んっでもって、キャラの好みで、性格の対策と傾向が出そうだ。 

 さて、ダラダラと続くガンダム王国の中で、ちょいとばかり特異な作品が出た。 ガンダム王国、基本サンライズが作っておる。 言うまでもなく、メジャーアニメ制作会社であり、日本のアニメを牽引しておる大動脈ある。 ジブリとは、ちょいと路線が違う。 もっと、露骨に商売根性が出ておったりする。 まぁ、ジブリは、理屈っぽい売り方をするな。 

 何が特異であるか? というと、サンライズに関連するものが本を書いたのではなく、作家の福井晴敏が、書いたのだ。 まぁ、なかなか思い切ったことをやったもんだなぁっと、思える。 この手のもんを作るとだな、猛烈な逆風を受けることになるのだ! ホームズものでも、金田一ものでも、ヒーローもんでも、駄目出しが出ておる。 福井晴敏も、自信があったのか、出たとこ勝負だったのか、定かではない。 「亡国のイージス」 で、作品は、知っておった。 「面白い本を書くんだなぁ」 と思っておったのと、アニメ夜話だったかな、それで、コメンテーターそれで、コメンテーターとして出ておって、「あぁ、この人、かなりオタクな人だなぁ」 という印象を持った。 

 平成のクリエイターってさ、自分の見たいもんを作るのよ、ある意味で、オタク層にアプローチはするんだが、作品として、オタク臭プンプンだったりするし、自分たちが見たいものというのは、願望だからね、作品としては、駄目駄目なのだ。 
 クリエーターは、ある意味で、拘束がないと、良い作品は作れないと思っている。 結果として、そうなったというのが、作品に思わぬエッセンスを加える。 ガンダムにしても、キャラが死にまくった理由は、声優さんのギャラが嵩むのを防ぐためなんでしょ、ガンダムでは、永井波平一郎がナレーターから、一見キャラを多数演じておった。 昔っから、そーいったことをやられていたけれど、それが顕著になったのがガンダムじゃね。 ちびまる子ちゃんは、凄いよな、一人で、キャラ掛け持ちまくりだもの! ヤマト、ガンダムイデオンは、打ち切りが結果として、映画と進むことになった。 

 話が反れたな、自分の見たいもんを作って、あーあと思ったのが、ウルトラマンシリーズだったかな、ゲストキャラや、怪獣、ストーリーに関して、やりまくちゃって、俺は好意的に見れなかった。 仮面ライダーもそーだよな。 俺の中では、「逆襲のシャア」 で、ファーストは、けりがついていると思っているから、何を今更、「逆シャア」 以降と思っていた。 

 ガンダムUC、1時間そこそこの作品を1作ずつ上映し、DVDも売って、採算をあげるという所業で金を稼ぐ方式で、成功した作品だ。 実に珍しく、最初だけ、ヒットして、尻つぼみになって、終了というのも、多いだけに良い例の一つである。 この方式のメリットは、テレビのよりも金を掛けることが出来、採算があがれば、更に金を掛けることが出来る。 デメリットは、採算があがらんかったら、途中で、頓挫である。 如何せん、観るのがオタクの目の肥えた連中である、中途半端な作品は作れん。 溢れんばかりのガンダム情報が出ており、観た連中が又、情報を流す。 クオリティーの高いもんを作らないと駄目よ、という流れだ。 

 当然であるが、俺は、「けっ! 似非もんが!」 と、思って、相手にせんかった。 じゃー何故に見る気になったのか? CSで、一気観放送があったからである。 金を払ってまでは観る気がないけれど、タダだったら良いかなという、安直極まりない発想だ。 7本、7時間越えである。 俺は、本と同じように映画を観ることが出来るので、「今日は、ここで終了」 と、しおりを挟み、後日見ることができる口なのだ。 良く、そんな観方が出来るなぁっと、言われるが、本と同じ要領で、俺には観れるんだけど。 

 さて、ダラダラと、前説が長くなってしまったが、この作品、今までのガンダムの中核となっておった部分を逆手に取った設定になる。 ファーストガンダム以降、連邦軍に肩入れした内容と、ジオン軍に肩入れした内容が交互に描かれている。 今回は、連邦でも、ジオンでもない。 作家らしく謎解きがある。 話しの中核は、ラプラスの箱探しである。 こいつを手に入れると、政権を手中に収まるほどの力があると言われている。 その鍵が、ユニコーンガンダムである。 

 ガンダムのデザインも、逆手に取った、無駄なもんを排除したファーストガンダムっぽいのだ。 ガンダムも進化しまくって、背中に武器背負っちゃって、紅白の小林幸子みたくなっておったからなぁ、ありゃいかんよ。 後半、やっぱ、背中に武器背負っちゃって、小林幸子になっちゃうんだけどね。 話しの設定が、「逆シャア」 の3年後ってことだ。 「逆シャア」 で、アムロ、シャアは死んでいると、思っていた。 作りたいガンダムを作ろうと思うと! シャアが必要になってくる! ここで、シャアもどきが出てくる。 フル・フロンタルである。 マスクをつけ、赤いモビルスーツを扱うと言ったら、シャアでしょ! デザインがさ、バロック時代のような髪形してるんさ、マスクもゴテゴテしたデザインだし、あれだあれ、宝塚版シャア。 

 おまけにユニコーンを初激突するとき、フル・フロンタルモビルスーツが横蹴りするんだよ、これってさ、ファーストのときと、一緒でしょ? そーいうなんだろう、ファーストファン心をくすぐる様なところがある訳だ。 ブライトが出てくるんだけれど、もぉー良い艦長になっているんだ。 フル・フロンタルにして、「やるな、ブライト」 と、言わせる。 あくまでも、ぶきっちょな昭和の男、ブライト。 歴戦を生き残り、信頼できるすこぶる判断力のある艦長になっているとこが、うれしかった。 そして、艦長室には、アムロの写真が飾ってあるのも嬉しかった。 そして、写真に向かい 「笑うなよ、アムロ」 と呟く。 

 ジオン軍を率いるのは、ドズルの娘、ミネバである。 確かZのときは、子供だったが、今回は成人し、自分の考えで、動いておる。 

 作家が、作品を書いているということもあり、台詞が良いんだ。 手強いガンダムファンを相手にするのだから、それ位は必要だよな。 そして、ララァが出てきて、ラストにアムロの台詞が一言だけある。 これも、ファンサービスだな。 

 んで、どーだったんだ? 見て損はしないという感じかな。 俺の中じゃ、やっぱ、「逆シャア」 で、アムロと、シャアは死んでいるのだ。